陶 房 日 報  とうぼうにっぽう 
陶房かまなりや

2008年10月20日(月)      かんしょ

 明け方の雨がウソのように良く晴れていい
 お天気になりました。今年は少ないなあと
 思っていたアキアカネも舞い降りて、あち
 こち突先にとまっていました。須知さんの
 作品の鳥の嘴の先に止まった奴はこんなに
 近づいて撮っても逃げませんでした。

 良い気分の午前中に今日は漢字を書きま
 した。漢詩の古典、詩経から 『関雎』 の
 一節です。漢詩には至って暗いのですが、
 大好きな藤沢周平さんの小説 『蝉しぐれ』
 の中でこの一節が引用されています。
 作中、少年時代の主人公が藩校で年初に
受ける講義でこの関雎が解説されます。小説の中では内容を聞いた
生徒たちが失笑するところを嗜める塾頭の生真面目な側面を強調し、
恋の歌であるが侮るなといった孔子の儒教精神にも触れて武士たる
ものの心のありようを諭しています。多感な少年たちは自分の将来
と恋の歌をすり合わせながら詩を復唱します。

この詩には曲がついているらしく、明楽の研究者の方々は明治時代
の月琴楽譜をもとに演奏を楽しんでいるようです。この詩を漢字ば
かりで書くと物々しい感じのお経のように見えますので仮名も隣に
書きました。くだけて解釈すれば自分にふさわしい聡明な彼女が
ほしいなあという歌です。特に最後の一行がとてもきれいです。

     窈窕淑女鐘鼓楽之
 
ようちょうたるしゅくじょはしょうこもてこれをたのしましむ

美しい人と鐘や太鼓で楽しみたいものだ。(こんな訳でしょう)

3000年前の人も現代人も恋をする心は変わらないのですねえ。




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