陶 房 日 報  とうぼうにっぽう 
陶房かまなりや

2008年10月04日(土)      やみがたり

7月『プリズンホテル全4巻』を一気に読み、8月新旧『遠野物語』を
重ね読みし、9月そろそろ時代物にのめろうと思っていた矢先ついつい
『勇気凛凛ルリの色』に浮気した事は9月9日の日報に書きました。
10月、いよいよ日も短くなり秋の夜長を重厚な歴史小説で楽しもう
と思っていたにも関わらず、今まで読んできたノリでふらふらっと
また浅田次郎氏の本に手をだしてしまいました。

 手に取ったのは時代の替わり目を書かせると
 抜群に上手い浅田氏の、大正浪漫義賊小説
 『天きり松闇がたり』 です。仕立て屋銀次
 一門、目細の安吉一家に育てられた最後の
 盗っ人村田松蔵の語る物語形式で進むお話
 は一本スジの通った意気地のある盗賊達が
 胸のすく仕事ぶりで世の中をあっといわせ
 る顛末の数々、下谷生まれの松蔵の歯切れ
 のいい江戸言葉に、聞き手となる獄中の小悪
党どもは静まり返り、看守までがしんみりと聞きほれるという語り
口は六尺四方にしか届かないという盗賊特有の秘術 『闇がたり』
読者は聞き手にもなり、松蔵自身の境涯にも同調し、ぐいぐいと
小説に引き込まれてしまいます。時代は大正、江戸と近代がこき混ぜ
になった半々の時代です。戦前のほんのつかの間のデモクラシーの
頃、大震災は待っているし大戦も控えた混沌とした時代に意地を通して
生きた人々をお芝居のように描き出すその筆力はまさに職人芸です。

つい二三ち前に読み始めたのにもう仕舞際まで進んでしまいました。
シリーズは全4巻、またこれにのめってしまい時代物は後回しになり
そうです。さらに勇気凛凛も続編を読みたいとおもっています。

このぶんじゃぁ あ、しばらくは浅田物からぁ あ、離れられますめぇ・・・




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