FM横浜の北村浩子アナウンサーが激奨していた本なので読ん でみました。小川洋子さんの 『博士の愛した数式』 いやあ、 いい本でした。流石に活字の虫北村さん推薦のことだけはあり ます。整った文体、知性にあふれた内容、そして飽きの来ない ものがたり。久しぶりに時代小説以外のものを堪能しました。
映画にもなったのでタイトルをご存知の方も 多いことと思います。実は私も映画を既に 見ていました。主人公の数学博士を寺尾聡 さん、小説では語部となる家政婦役を深津 絵里さん、二人が実に渋い演技をし、とても 静謐な良い映画でした。が・・・小説はさらに さらに良かったです。物語は、交通事故で 記憶に障害をもった初老の博士と、そこに 雇われた家政婦と、その息子「ルート」のおりなす日常劇です が、博士の潔癖なまでの数への愛情と家政婦親子の博士への 思慕の情が巧みに行間に織り込まれて、活字を追うのがとても 楽しい本でした。数学音痴の私がこれほど楽しめたのは難しい 公式や、素数の話などを作者がとてもきちんと解釈し、博士の 言葉を借りて愛情をこめて美しい文章に綴ったからでしょう。 友愛数、完全数、双子素数などなど、理屈はわからなくても その単語の響きだけでなにやら魅力的です。本の中で博士は 言います。 「物質にも自然現象にも感情にも左右されない、 永遠の真実は、目には見えないのだ。数学はその姿を解明し、 表現することができる。」 物造りにとっても新たな形を創造 することは、数学の証明に似た作業でもあります。方法は違え、 求め方は似ているようで、この言葉には無限の力を感じます。
良い本は読後感がことのほか快いものです。この本もラスト には少し悲しい場面がありますが、だからこそとてもきれいに 完結しています。じんわりとした温かいものが心に残りました。
FMヨコハマ 北村浩子の Books A to Z http://www.fmyokohama.co.jp/onair/program/steps/books/2003.html
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