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★★★
伊東が真撰組へ入ってきたとき、近藤さんは彼に沖田の教育を頼む。 「トシはあいつのこと頭がカラだって言うけど、俺はやれば出来る子だって信じてる」 伊東はあんまり乗り気じゃなんだけど、(初日の夕食のトンカツの衣から、ゴム製のゴキブリが 絶妙な具合にのぞいていて、それが沖田の仕業だった。虫嫌いの伊東はそれ以来、トンカツが食えない) (それは本当は土方さんへのいたずらだったんだけど、席順が変わって伊東に行ってしまった) (でも大人としてそういうことにこだわるのもどうかなと思い直し) 適当な雑学とか教えたり、「これ読んでおいたら?」みたいに本を渡したりして、 沖田もわりと素直に読んだり聞いたりするので覚えが良かったりする。 そして伊東の趣味はクラシック鑑賞。ひとりで聴きに行ったりもする。 そういう伊東と一緒にいる場合部屋でかかっているのは必ずクラシック。 「この曲はね」とか言われて「ふーん」なんて適当に頷いたりしているうちに、 沖田はいつのまにか喫茶店や街の中でふいに聞こえるクラッシックが 早押しピンポンパンで答えられるくらいになる。だから、ふと、「あ、バッハ」 「平均律クラヴィーア第2巻、第16番じゃん…」 伊東と一緒に見廻りに出たときに、おなじようにつぶやくと「沖田君、すごいねえ」 と素直に誉められて、剣の腕以外を他人に誉められたことのない沖田はうれしくなる。 そこから伊東と沖田の距離は近くなっていく… で、伊東が死んだあともそういう風に曲名がわかってしまうたびに伊東を思い出して、 「ベートーベン。ピアノソナタ、第8番…」とかつぶやくんだ。そして自分達がなにをやっているのか 突然にわからなくなるんだ。それで土方さんに詰め寄るんだよ。 「伊東先生は、どうして、死ななきゃなかったんですか」 揉めているうちに、絶対の禁句を言ってしまうわけですよ。「どうして姉上は…!」みたいな… そんで頬を打たれて「頭冷やして来い」って言われて、とぼとぼ夜の街を歩くのです。 菊一文字で音楽(もちろん伊東が教えてくれたクラシック)を聞きながら。 なんだかんだ言っても沖田は土方さん大好きなので、土方さんの行動に本当ならば疑問なんかないんですけど、 伊東を殺すときに土方さんの迷いを感じ取ってしまって、沖田はそれで揺れるんですよ。 「もしかして正しい道はどっかにあったのかな?」って思うんです。 どうして(ミツバねーちゃんのことも含め)みんなが幸せになれないんだろう。 みたいに思うんですよ。そして夜空に浮かぶ星、そこを通り過ぎる宇宙船を見つめて泣くんです。 泣いたってどうしようもないことを知りながら泣くのです… というところまで妄想して、電車の中でひとり涙ぐみました。沖田ー!
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