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2008年10月13日(月)
その背中
ベーカリーカフェは近所の出来のいい息子の話や病気の話、デパートの特産品売り場の話で満ちていた。低いざわめきに囲まれて、私は本を読む。それはとても幸せな時間である。香ばしいパンの匂いと珈琲の匂い。規則正しく繰られるページ。物語は飛ぶように進む。そろそろ佳境だ。
ひとりで本を読んでいる後ろ姿が侘しさを背負い込むようになるまであとどのくらいの猶予があるだろう。私はいつまでもこうしていたい。おしゃべりの渦には加わりたくない。そんなのは気の持ちようさ、とあなたは言うだろう、私だってそう思う。けれど、前の席にひとりで座っていた女性がトレイをもって席を立った時、その少し曲がった背中はとても疲れていた。目をそむけたくなるほどに。
nadja. |
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