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2008年09月15日(月)   牽強付会

引き続きディラード。

「さしあたりいま、あなたは飛ぼうとしている。さしあたりいま、あなたの仕事は息を詰めることだ。」

青虫の話には続きがある。私が突き落した最初の青虫はすでに半ば蛹化していた様子で、全身は茶色い模様で覆われていた。彼/彼女はさしあたり、飛ぼうとして息を詰めている最中だったのだ。同じ日の夜、これまた同じく人差し指ほどのころころと肥った、今度は鮮やかな緑色をした青虫がアサガオの葉っぱをおいしそうに齧っていた。どうりで花が咲かないわけだ。これもなにかの縁ではないかと、すさまじい食欲をしばし観察しているうちにほのかな親愛の情が芽生え、蝶になるのか蛾になるのか、とにかくしばらくすれば飛んでいくのだろう、と見守る決意をしかけた直後、もぞもぞと動くもう一匹の青虫、ぽってり見事に肥った青虫が視界に入り、無残に食い荒らされたアサガオのさまが脳裏に浮かんで、父を呼んだ。

突き落としてくれれば良かったものを、父は彼/彼女たちをひょいとつまむとスリッパで踏みつぶしたのだった。ぷくぷくとはりつめんばかりに肥っていた彼/彼女が踏みつぶされる瞬間の生々しさは背筋にぴったりとはりついて離れず、あれから2週間ほど経った今日になっても、強烈な罪悪感を伴ってじくじくと蘇ってくる。以来青虫を見かけることはなく、おかげでアサガオは立派な花をつけ、おそらく来週あたりにはタネも取れるだろう。しかし、飛べるはずのものの羽をもいだという苦々しい記憶を贖うことはできない。

当然のことながら、ディラードはなにも青虫の話をえんえん書いているわけではない。私が勝手に青虫の例に引き寄せて読んでいるだけのことである。


nadja. |mailblog