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2006年12月05日(火)   明日をめぐるひとりごと

昨日あんなことを書いたからか、カボティーヌが隣席にやってきた。この一ヶ月をますます耐えられそうにない。



嫌いなんだ、あの匂いが。自分がそれをつけていたときのことを思い出すから。お酒とタバコの匂いに負けないような香水は、昼日中につけるべきじゃない。

そしてそれは彼とはじめて一緒に眠った夜につけていた香水の匂いでもあるのだ。それは私の誕生日のことで、その頃私は夜働いていて、仕事が終わってから、派手な髪と化粧のまんまタクシーに乗って、まるでコールガールを見るような運転手の視線にさらされながらウェスティンに行った。本質的には同じことだな、と、思って笑ったことを覚えている。抱かれるために、そのためだけに駆けつける女。

それからちょうど6ヶ月、明日が彼の誕生日である。なんだこの因果、と毎年思う。5年前の明日、私はエルメスのネクタイを持って、南海電車に乗る。人気のない昼間の会社の独身寮に、彼の前に付き合っていた人に教えてもらった暗証番号を使って侵入し、彼の部屋のドアノブに紙袋を引っ掛けておく。あの頃私は狂っていたので帰りの電車のなかで人目もはばからず泣く。搾り出すように泣く。

あの時紙袋に一緒に入れておいた『重力と恩寵』を彼は読んだだろうか。一緒に暮らしていたとき、その本はノンフィクションばかりがずらりとならんだ本棚の中で随分肩身が狭そうだったけれど。

今彼と暮らす女性はそこになんらかの痕跡を読み取っているだろうか。多分、彼女なら、と思いたい気持ち半分、思いたくない気持ち半分。それとも、もう、捨ててしまうか売ってしまうか、しただろうか。

君が選んだ女を私は生涯認めないけれど彼が選んだ女性はなんとなく、分からないでもない。随分チャーミングな人だ。活発で、明るくて、いつも一生懸命仕事をしていた。こんなのの次だもの、そういう人が魅力的に見えて当然だ。それに私の大学の後輩でもある。頑張って欲しい。

脱線した。

そう、そして5年前の明日、ネクタイの行方を巡って私の昏い思いは彷徨し、5年前の来週、血に沈む。それらすべてのはじまりとしてのカボティーヌ。

まったく、いやな匂いだ。

4年前の明日は神戸のベイシェラトンにいる。3年前の明日は白い箱の中にいて、彼のイタリア土産をまだ受け取れないまま震えている。それはカシミアのマフラーで、随分と私を暖めてくれた。2年前の明日と1年前の明日はどうぞご自由にサイト内を探ってください、そして今年の明日は、どうぞ明日もここを読みにきてください。

いつもいつも、くだらないひとりごとにつきあってくれて、ほんとうに、ありがとう。


nadja. |mailblog