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朝から晩まで薬を数え続けるのも、これだけの薬に守られてようやく生きているということを訴えかけるためのジェスチャー。それは少し分かる。薬の数や種類で自分の病状の深刻さを誇示したがる群れの中にいたことがあるから。 それぞれがそれぞれの画面を見つめて、この家の中心は全く空虚だ。 祖母は目を伏せて今日私が買ってきたトランジスタラジオを聴く。穏やかな機械だ。粗悪なスピーカーから洩れてくる音はどことなくあたたかいようでどことなく寂しい。 そして起き上がり、薬を数え、「帰ろうかな」と呟く。繰り返し。何度も。 少しだけ分かったから、一緒に薬を確認し、「帰りなや」、とできる限り穏やかな声で言う。繰り返し。何度も。だが私はあまり長くこの偽善じみた態度を自分自身が耐えていられると思えない。いつ右の唇の端っこがつりあがるのか怯えている。 大切にしているのだ、とどれだけ自分自身に言い聞かせようとしても、今更何を、と欺瞞を暴きたてようとするもう一人の自分がいる。 家中が寝静まった深夜、缶ビールのプルタブを引く音とパソコンの羽音だけが響く。 |