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| 2006年06月01日(木) |
とにかくそういうことなのだ |
目覚めたら、身体の表面に柔らかい毛がみっしりと生えていた。口の周りがもぞもぞするなと思ったらどうやら数本のヒゲのようなものまで生えている。おそるおそる手を見ると、そこにあるはずのエッシーのスモーキーピンクのマニキュアを施した爪は内側に湾曲した鋭い爪にとってかわられており、望むならそのまんま自分の寝首を掻けそうだった。そして、やはり、手のひら、いや、かつて手のひらであったはずの部分には、ピンク色のぶよぶよとした肉腫のようなものがへばりついていた。そうか、これが肉球というものか、と夢からまだ覚めないまんまのぼやけた頭で納得したが、実際自分のものになってみるとどうもいけない。自分で自分の肉球の感触を楽しむというわけにはいかないからだ。どうにも厚ぼったくて、頭もかけやしない。
空腹を感じて、とにかく起きてみることにした。肉球をフローリングにつけると、ぺちゃ、っという奇妙な感触がした。濡れた足で床を踏んでいるような気分だ。四つんばいというのも気恥ずかしい。これまで薄いレースだの刺繍だのでさんざん隠してきたところも丸見えじゃないか、と後ろを振り返るとそこには立派な黒い尻尾が生えていた。視界がいつもより1メートル30センチほど低くなっていて、あちらこちらに積まれた本だのCDだのがいやに大きく見える。机の下など埃だらけで今にもくしゃみが出そうだ。
まあ、とにかく、そういうことなのだな、とぶるっと身を震わせて、伸びをしながら欠伸をしたら、にゃあ、という間抜けな音が喉から洩れていった。
今のところ、まったく、悪くない。
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