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22時までおなかがもつわけもなく。 19時過ぎの休憩時、1階に下りた黒い羊はいつものコンビニエンスストア、という名の餌場(何故なら羊たちの大半はここの商品を主食としている!)で、ぶたまんでも買おうと思った、けどぶたまんは売り切れていたので仕方なしにカレーまんを買った。あったかそうで、湯気がほくほくしていて、美味しそうだった、ただの井村屋のカレーまんだが。 そして黒い羊は失敗を犯す。 いざ、と口を開いた瞬間、「ぽてっ」という情けない音を立てて、カレーまんは黒い羊の手からこぼれ落ちていったのだ。ぽてっ、だったかぺちゃ、だったかべちゃ、だったかは正確にはわからないが、とにかく、美味しそうな井村屋のカレーまんは黒い羊が「あ」という声を発する間もなく、コンクリートの床にへばりついているただの黄色い物体と化した。 カレーまんが死にゆく様を茫然と見送っていた黒い羊が視線を上げると、そこには同じようにカレーまんと黒い羊を茫然と見つめている男の顔が二つあった。 多分黒い羊はあの男たちの顔をずっと忘れないし、床にぽつんと転がっていたカレーまんの哀れさを忘れないし、23時の帰り道で思い出し笑いを押し殺しながら歩いたことも忘れない。あの牧場で黒い羊は大きいものから小さいものまで数多くの失敗を犯した。時には怒鳴られ時には逆ギレし時には知らぬ存ぜぬでごまかし通してきたが、いざ立ち去ろうかという間際になってまさか、顧客対応にもならず稟議にもならなかったにも関わらず、「どうあがいても取り返しがつかない」失敗を犯すとは、黒い羊は夢にも思っていなかった。 |