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2006年03月04日(土)   黒い羊の余罪

そう、従順は無垢とイコールではない。むしろ、どちらかといえば従順は穢れに近い。もしも羊がたった一匹で、たった一人の羊飼いに仕えているのならば、その言いつけを守りさえすればよいのだから無垢でもいられよう。だが羊は群れをなす生き物であり、なおかつ羊飼いは一人ではない(これが問題をさらにややこしくしている)。

こちらの羊飼いの言いつけに従おうとすればあちらの羊飼いを裏切らねばならず、あちらの羊飼いの機嫌をとるためにはこちらの羊飼いに悪態をついてみせねばならず、そうして同じ群れに属する羊たちと歩みをそろえるためにはこちらとあちらの羊飼いに向かって草しか食めない平らな歯をむいてみせねばならない。

黒い羊はトリプル・スタンダードとでもいうべき状況に身を置いている。羊でありながら舌先は2枚にも3枚にも割れているのだ。

こうして黒い羊に罪状が追加される。

常に他を欺いていることにおいて、有罪。

そればかりではなく、こちらの羊飼いにもあちらの羊飼いにも仕えたくない、他の羊たちと歩みをそろえるなんてまっぴらごめんだ、という自らの本心を欺いている、ことにおいても、有罪。


nadja. |mailblog