盲目虫

完全という言葉を嫌いながら
完全という言葉に憧れている
不完全な生き物で世界は溢れ溢れ溢れ

コンクリートの温かさを知り
コンクリートの大海原に溺れ
光を失った盲目虫が一人世界で涙する

カランコロン カラカラコロン
コロンカラン コロコロカラン
羽も失った足も失ったその身体で飛ぶ
夢を見る希望の鐘に導かれている夢を見る
今が過去か未来かあるいはもっと違う時間か
考えるその刹那に消える夢は夢
遠ざかる音景色横たえた身体は力なく
全力で不完全を主張し続ける

カランコロン カラカラコロン
コロンカラン コロコロカラン
闇が近づいてきた夜でもないのに闇が
光など見えてもいないのに近づいてきた闇が
近づいては離れ完全への道を教え諭すように闇が
今からどこかへ連れ去ろうと様子を窺う
不完全を嘲笑い蔑み貶し罵倒し足蹴にしている
その先に完全があるのだと主張し続ける

カランコロン カラカラコロン
コロンカラン コロコロカ
カランコロン カラカラコロン
コロンカラン コロコロカ

かつて世界は完全だった
面白くも楽しくも虚しくもない
けれど完全だったそれはたぶん間違いなく
この身体は完全の欠片散り散りになった完全の欠片
見たこともない完全を夢見る不完全

かつて世界は完全だった
闇とともに近づく完全にそんなにおいがした
さようならとともに涙とともに笑顔とともに
この身体は完全の一部に戻り不完全が消えてしまう
見たこともない完全という闇という死

カランコロン
またひとつ
コロンカラン
またひとつ

不完全が消える瞬間
わずかに輝く光がこぼれる
その光を見つめていた
コンクリートの大海原でまたひとつ
お迎えが来たよ

カランコロン






ぼくのせかいはひろがっていきます。ひろがればひろがるほど、ことばはふくらんでいきます。