不変憂慮

数千年の歴史の陰で流れた
不必要な血と汗と涙と
悲愴と憎悪と絶望

ひからびたミイラが目を覚ました
何も変わっていない世界への悲嘆
人間が人間になって以来
変わることなく繰り返される性か

数千年の歴史の陰で流れた
無遠慮な嘘と噂と夢と
約束と殺戮と野望

ひからびたミイラが目を覚ました
数千年の眠りすらわからないほど
人間は人間のまま変わらず
異国の地への流刑を思い起こす

一番は誰かということが
どれほど大事なことだと思うか
一番は偉いという価値観が
どれほど大きな過ちを生み出したか

ジリリリリン
と警鐘が鳴る
ジリリリリン
と閉館が知らされる

ひからびたミイラはただ天井を見つめたまま
踵を返した人間たちは警鐘に気づかないまま

繰り返していくのでしょうか 何度でも
繰り返していくのでしょうか いつまでも
人間の性だからという理由で 何度となく
無視されることすべてが過ち それでも

ジリリリリン
と警鐘が鳴る
ジリリリリン
と閉館が知らされる

ひからびたミイラは再び目を閉じた
かすかに聞こえる空調の音を子守唄に

ポタッ
水滴が落ちる音
ポタッ
水滴が落ちる音

誰も知らない空間の
誰も知らない少女の






ぼくのせかいはひろがっていきます。ひろがればひろがるほど、ことばはふくらんでいきます。