ひとりまたひとり

わたしはいま
灰色の空と灰色の街の片隅に立って
秩序化された無秩序の一端を握りしめる
水浸しになってしまったチケットには
ウェバァラフトが滲んでいます

わたしはいま
灰色の空と灰色の町の片隅に立って
秩序化された無秩序の一端を握りしめる
通り過ぎた灰色の犬がわんと吼えたから
波紋が世界を崩壊させてしまうでしょう

腐ってしまってもなおそこにいる
腐敗者たちがさまよう霊場で
たちならぶ廃墟ビルのなか
ひとりまたひとり
ひとりまたひとり

ウェバァラフトの上映が終わりました
灰色の雨にやられたチケットが破れました
わんと吼えた犬は壊れたエサ皿を眺めました

灰色の空の灰色の町の灰色のごみ箱
に詰め込まれた腐敗者たちが
ひとりまたひとり
ひとりまたひとり
一縷の光を求めています

轟音とともに走り去るオゥプンカァにも
どこかから飛んできた七色のオウムにも
地面の下を駆け抜ける下水の流れにも
希望なんて見つかりやしないのでしょう
廃墟ビルからわずかにもれる明かりだけが
希望の光に見えてしまうのでしょう

腐敗者たちは笑顔で大声で千鳥足で
ひとりまたひとり
ひとりまたひとり
せかいのはぐるまになりはててしまうのです






ぼくのせかいはひろがっていきます。ひろがればひろがるほど、ことばはふくらんでいきます。