月に舞う桜

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2022年10月31日(月) 10月の読書記録

★合計19冊
123. 一穂ミチ『きょうの日はさようなら』
124. 翔田寛『黙秘犯』
125. 大山誠一郎『赤い博物館』
126. 東野圭吾『犯人のいない殺人の夜』
127. 染井為人『正体』
128. ジョン・ロールズ『政治的リベラリズム 増補版』
129. 東野圭吾『天使の耳』
130. 小笠原慧『あなたの人生、逆転させます 新米療法士・美夢のメンタルクリニック日誌』
131. 坂木司『仔羊の巣』
132. 小笠原慧『風の音が聞こえませんか』
133. 江國香織『抱擁、あるいはライスには塩を(上)』
134. 江國香織『抱擁、あるいはライスには塩を(下)』
135. 東野圭吾『マスカレード・ゲーム』
136. 東野圭吾『ある閉ざされた雪の山荘で』
137. 染井為人『鎮魂』
138. 梶井基次郎『檸檬』
139. 東直子『春原さんのリコーダー』
140. 川内美彦『尊厳なきバリアフリー「心・やさしさ・思いやり」に異議あり!』
141. ジェローム・デイヴィッド・サリンジャー『キャッチャー・イン・ザ・ライ』

※数字は1月からの通し番号

先月から読んでいたロールズの『政治的リベラリズム』をどうにか読み終えた。が、私の頭では、ほとんど理解できなかった……。『正義論』もかなり難解だったけど、『政治的リベラリズム』に比べれば『正義論』のほうが理解できたかもしれない。
今月は、小説をたくさん読んだ。
染井為人の小説は始めて読んだが、『正体』がとても良かった。死刑判決を受けた少年死刑囚が脱獄して逃亡するというストーリーは、映画『逃亡者』の二番煎じ感が否めないといえば否めないけれど、逃亡先でのエピソードはいまの日本の様々な社会問題を突きつけるものだった。オリンピックという華々しさの影にある劣悪な労働環境、デジタルタトゥー、田舎の男尊女卑と嫁に押しつけられる介護、新興宗教、介護施設の人手不足、そして司法と死刑制度の問題。
それから、主人公が逃亡先で名乗る偽名がどれも、現実の冤罪被害者の名前を模していて、そこに著者の並々ならぬ思いを感じた。
あとは、川内美彦の『尊厳なきバリアフリー』も良かった。車椅子ユーザーである著者が、日本のバリアフリー施策が障害者の人権と尊厳のためでなく「やさしさ」や「思いやり」の話にすり替えられており、いかに「使えない」ものになっているかという現状を、自身の体験と法律の条文をまじえて語っている。車椅子ユーザーである私にとっては、目新しい内容は特にないけれど、どうして私が日々尊厳を削られるような思いで暮らす羽目になっているのかがよく分かる。これは障害当事者ではなく、健常者が読むべき本だ。


桜井弓月 |TwitterFacebook


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