月に舞う桜

前日|目次|翌日


2016年10月15日(土) 【10/14】Visual Japan Summit(XJAPANと無敵バンド)��

10/14〜16に幕張メッセで行われたVisual Japan Summit 3daysのうち、初日のXJAPANおよび無敵バンドのライブについて。

XJAPANセットリスト↓
Miracle(SE)
JADE
Rusty Nail
Forever Love
紅
La Venus
Born To Be Free
X
WORLD ANTHEM
ENDLESS RAIN
SUGIZOバイオリンソロ
ART OF LIFE(後半のみ)

Xのライブは予定より30分ほど遅れて始まった。去年12月にJAPANツアーがあって、今年1月にPATAが倒れて、3月のウェンブリー公演が延期になって、そして今、二度の手術と休養を経たPATAの復帰ライブだ。

MiracleのSEが流れる中、ステージ両脇のスクリーンにはおなじみのワールドツアーの映像が映し出され、曲の盛り上がりと同時にYOSHIKIが登場した。会場中から歓声が沸く。
続いてほかのメンバーも登場。PATAも、いつもの立ち位置にちゃんといる。私は、ありったけの力でPATAの名前を叫んだ。ただそこにいるだけで、嬉しいし、尊いし、感謝だ。
HEATHは黒いシャツの上半分くらいまでボタンを開けていて、胸元が見えてセクシーだ。SUGIZOは、LUNA SEAのときは真っ白い衣装だったけれど、Xでは黒づくめだった。

JADEが始まってステージ前方から火柱が上がり、Toshlがスタンドマイクを握って歌う。
Toshlはニコ生やテレビだとお茶目でかわいい一面を見せてくれて、私はToshlのそういうところが大好きなのだけれど、こうしてステージに立つとやっぱり貫禄がある。「高い壁を打ち破って世界に羽ばたくXJAPANのボーカリスト」の姿だ。
フェスは3日間あるけれど、私は初日のみ参戦だ。明日のことは考えなくていい。だから、1曲目から全力で向かっていった。
JADEの間奏、PATAのギターソロで、目頭が熱くなる。PATAがステージに立ってギターを弾いている。当たり前だけど、当たり前ではない光景。

続くRusty Nailで、PATAが下手(私がいた方)の端まで来てくれた。笑顔でギターを弾き、合間に片手を高く上げて客席に応える。PATAに手を振りながら、目から涙が零れ落ちた。
涙にはもちろん「戻ってきてくれて本当に良かった」という安堵も込められているけれど、それ以上に、もうかなしい思いはしたくないという切実な願いの方が大きかった。
もう二度とかなしい思いはさせないで。心配させないで。そう、5人に向かって祈る。
でも、これからもきっと心配は続くだろう。しょうがない。かなしませないでくれたら、それでいいか。それに、誰かを心配したり誰かを想って泣いたりできるということ、そういう相手に出会えたということは、とても幸せなことでもある。
幸せを、ありがとう。心配かけるんじゃねーよ、ばーか!
去年の横浜アリーナではほとんど泣かなかったのに、今回は序盤からこれだ。先が思いやられるなあと内心苦笑しつつ、Toshlに負けないように歌った。Rusty Nailのサビ「どれーだけ〜」は、泣きながら大声で歌うと、歌というよりただの叫び声になってしまう。

(ちなみに去年の横浜アリーナ4daysでは、Toshlがアコギ弾き語りで泣きだして声を詰まらせても、私は泣かなかった。唯一泣いたのは、4日目にToshlがMCで「これからの人生は、みんなと幸せになるぜーっ!」と言ったときだ。あれは、瞬時に臨界点に達して号泣してしまった)

Rusty Nail が終わると、Toshlが「えー、今日は、ヴィジュアル……ジャパン……サミット?」と、なぜか小声で自信なさげに首をかしげる。そして、一転、「Visual Japan Summitへようこそ!」と力強く叫ぶのだった。今日も安定の面白さ。
ステージにはToshlとYOSHIKIだけが残り、Forever Loveを披露した。後半、ToshlはYOSHIKIの傍らに立って、YOSHIKIの肩に手を置いて歌った。YOSHIKIはそんなToshlをちらりと振り返って、ピアノを弾く。二人とも、良い表情をしていた。

Forever Loveのあと、紅のイントロが流れた。
ストリングスバージョンのイントロだったので「次は紅かあ」と平常心で受け止めていたのだけれど、油断したところへ、ステージ後方のスクリーンにラストライブのHIDEが映し出された。スクリーンの中、ステージ上の階段に座って、ギターで静かにイントロのアルペジオを奏でている。
若いなあ、と思った。ToshlもYOSHIKIも他のメンバーも私たちも、残された人間は皆、それぞれに年を取った。あの頃、私はHIDEの半分ほどの年齢だったのに、今はもうHIDEの年を超えてしまった。HIDEだけが、若い。
HIDEの若い肌を見ていると、やっぱりかなしくなった。いまここにいないことよりも、長い年月に隔てられてしまったことが、かなしかった。
HIDEはずっと先を行っていて、私たちが置き去りにされたのだと思っていたけれど、本当はそうではないのかもしれない。死者はある地点にずっと留まっていて、取り残された生者は嫌でも前に進んで年を重ねていくしかない。

Toshlは私たちに背を向けて、微動だにせずスクリーンを見つめていた。そして、出だしのスローな英語詞を3,4単語だけ歌ったところで、声が震えて、歌えなくなってしまった。
声を詰まらせて、口元を手で覆っている。それから、サングラスをちょっと浮かせて、涙をぬぐう仕草。そんな姿を見たら、自分の涙腺が崩壊するのを止められなかった。
Toshlのばかぁ。スクリーンなんか見るから泣いちゃうんだよお。YOSHIKIはちゃんと横を向いて、正視しないようにしてるのに。
Toshlが歌えないなら歌わなくちゃ、と思って必死に声を絞り出すけれど、むせび泣いてしまって、てんで歌にならない。出だしの英語詞のところは音が静かだから、自分の声がよく聞こえる。音なんて全然取れてなくて、泣きじゃくりながら必死に何かを訴える子供みたいだ。手に握りしめたYOSHIKittyのタオルがぐしょぐしょに濡れていく。

泣いているのはHIDEのせいじゃなくて、たぶんToshlのせいだ。「泣かないで」と、「泣いてもいいよ。私たちが歌うから」とが交錯した。
ToshlがHIDEを想って涙するとき、その胸にある想いが後悔や自責でなければいい。そうでないようにと、祈った。大丈夫、貴方は許されているよ。

紅は何度となく聴いてきたけれど、この日の紅はきっと一生忘れない。口を手で押さえて立ちすくむToshlの姿を、一生忘れない。

イントロの終わりで、HIDEが小さく笑う。あの笑顔に救われる思いがしたのは、私だけではなかったはず。HIDEはあの頃のまま若くって、でも、ずっとずっと先を行っていて、そして私たちと共にいる。
イントロが終わって、HIDEは消えて、YOSHIKIがドラムのシンバルをシャラララと鳴らす。PATAとHEATHとSUGIZOも再度ステージに出てきた。HEATHは曲に合わせて、一面に薔薇の柄があしらわれた真っ赤なシャツに着替えていた。
Toshlは気持ちを吹っ切ったように前を向いて、顔を上げて、いつものように「紅だーーーっ!!」と叫んだ。客席に向かって。天に向かって。
それからはもう、エネルギーがぶつかり合う、いつも通りの紅だった。

(続く)


桜井弓月 |Twitter|Facebook


My追加

© 2005 Sakurai Yuzuki