月に舞う桜

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2008年06月02日(月) Beautiful Harmony(1)

金曜日、アフリカを支援するチャリティーコンサート「Africa mission 2008」に行った。先日の日記にも書いたけれど、TOSHIが出ると知って急いでチケットを取ったのだ。
こんなに早くTOSHIに再会できるだけでも大喜びなのに、今回はもう一つサプライズがあって、なんと、急遽コンサートが完全な招待公演になった。受付でチケット料金を全額返金するとの知らせが届いたのは、前日の木曜日だった。
火曜日にコンサートのことを知って、水曜日にチケットを手に入れ、木曜日には無料コンサートに切り替わり、金曜日にTOSHIの生歌を聴いた。何だかものすごい展開の速さだった。タダでTOSHIくんを観られるって、すげーな!

外はあいにくの雨。しかも寒かった。
Xおよびメンバーのイベントに行くと、いつも天気が悪い。hideサミットのときは雨こそ降らなかったものの、ずっと曇っていて風も強かったから、少し肌寒かった。
いったい誰が雨男なんだ!? と元凶を探していたけど、Xとしてじゃなくソロでの出演でも雨ってことは、TOSHIのせいか!!
んー、待てよ。YOSHIKIのシンフォニックコンサートのときも雨だったなぁ……うーん。
あ、「私が雨女」という説は無しで。

会場は、パシフィコ横浜の国立大ホール。桜木町へ行くのは久しぶりだった。
受付への通常ルートだと階段しかなかったので、インターコンチネンタルホテルのエレベーターを使った。このホテル、初めて入った。広くて静かで、ちょっと落ち着かない。でも、一度は泊まってみたい。
エレベーターで階を下りて、またホテルの外に出ようとしたとき、ホテルの人に「警護対象の方がいらっしゃるので、このまま少々お待ち下さい」と止められた。言われてみれば、入り口付近には体格の良いスーツ姿の外国人が何人も立っていた。アフリカ開発会議が開かれている関係で、要人もたくさん泊まっているんだろう。要人が通るからと通行を制止されるなんて、まるでドラマみたいだ。

会場には車椅子用席と言うほどの特別なスペースはなかったけれど、前から30列目くらいにわりと広い通路があって、そこで観ることができた。ドームや味の素スタジアムに比べたら、TOSHIをかなり近くに感じられた。ステージ上の彼を見ていれば十分だったから、大型スクリーンはほとんど見ていなかったもの。
ただ、そんなにステージを見上げる感じではなかったのに、首がものすごく痛くなった。叫んだり揺れたり跳ねたりするXのライブでさえ、痛くならなかったのに。観ている間、体が固まっていたのかしら。

実行委員長の挨拶のあと、アフリカで長年獣医師をやっている男性が出てきて少し話をし(アフリカの現状や日本のODAに関すること)、アフリカのミュージシャンたちと1曲セッションした。
それから、世界各地の先住民の楽器を演奏する岡野弘幹が登場。今回は、アフリカではなくアメリカ先住民の楽器を演奏した。
続いて、アフリカと日本のルーツを持つ男性ユニットBLENDZが出た。このユニットは横浜生まれらしい。岡野弘幹のゆったりとした広大な音楽から一変、会場がFankのリズムに包まれて盛り上がった。こういう系統の音楽は普段聴かないので、そもそもFankとHip-Hopの違いもよく分からないのだけど、ノリノリで楽しかった。
メインボーカルのマイケルは、ガーナと日本の血が流れているらしい。国籍は日本だけれど、ガーナも自分の国。いつか帰りたい。帰れるように、いい国になってほしい。そう言っていた。
いい国になってほしい。その一言だけで、いろいろな問題を抱えている現状を垣間見た気がした。

次に、村上"ポンタ"秀一と歌手のMyrah Kayが「アメイジング・グレイス」を披露。この曲は完全なアカペラかストリングスが入るイメージがあったので、ドラムと歌だけというのは新鮮だった。それに、「アメイジング・グレイス」というと本田美奈子の歌を思い出すけれど、Myrah Kayの「アメイジング・グレイス」はもっと太くてパワフルだった。本田美奈子の優しい声もいいけれど、アフリカにはこの力強い声が合うと思った。
Myrah Kayと入れ違いで、ベリーダンサーが登場した。ベリーダンス、一度観てみたかったんだ。きらびやかな衣装に、美しく妖艶な踊り。常に腰が動いているのに、体の軸が全然ぶれない。あの小刻みな腰の動きは本当にすごい。観ていて引き込まれた。機会があったら、また観に行きたいなぁ。
みんな腰がきゅっと見事にくびれているので「さすが、ベリーダンスやっている人はスタイルが素晴らしいなぁ」と感心していたのだけど、途中から出てきたメインのダンサーはちと違って、ふくよかだった。ふくよかでも、ダンスってできるのか。と言うか、ダンスやっていても、ふくよかな体型って維持できるのか。そう言えば、森三中の村上知子が社交ダンス上手かったなぁ……なんてことを思い出す。

村上"ポンタ"秀一が、「世界中のいろんな国に行ってみて、ヨーロッパやアメリカはまた行きたいと思う国が多くあるけれど、アフリカは『行きたい』ではなく『帰りたい』と思う」と言っていた。それから、「アフリカに行ったあと、自分の音楽が変わった。自由になった」とも。

続いて、宗次郎。
オカリナって、あんなに種類があるんだね。知らなかった。大きさによって、音色も様々。「ホー」や「ボー」という音だけかと思っていたけど、小さいオカリナは「ピー」という音が出る。
どこまでも広がるアフリカの大地、空、太陽、風、土に染み渡ってゆく水。そういう風景をもっと感じたくて、1曲だけ目を閉じて聴いた。

そしていよいよ、黒いシャツにグレイのスーツ姿のTOSHIが登場。
ライブのような叫び声はないけれども、「TOSHI〜」という呼びかけがちらほら聞こえた。
ソロのTOSHIは、やはりロックミュージシャンではなく、落ち着いていて礼儀正しいボーカリストだった。
歌の前に、これまでの道のりを話した。X解散後の10年間に自分がやってきたこと、X再結成の経緯、HIDEとWithout Youという曲のこと、これからXとして、あるいはソロとしてやっていきたいこと。

「去年ロサンゼルスに行って久しぶりにYOSHIKIと会って……YOSHIKIというのは僕のパートナーなのですが、子供の頃から、幼稚園のすみれ組からの付き合いで、小学校5年のときに一緒にバンドを組んで、それからずっと一緒にやってきました。この10年はほとんど連絡を取っていなかったけれど、久しぶりに会って、彼のスタジオで曲を聴かせてもらいました。Without Youという曲です」

会場には、Xのことを知らない人たちもたくさんいたと思う。Xというバンド名くらいは知っていても、メンバーの名前や曲はほとんど知らない人たちが。
そういう人たちにも分かるように話すとき、YOSHIKIのことを何と形容するか。TOSHIは、「僕のパートナー」と言った。それが、私がこの日一番嬉しかったことだ。
パートナー。
最高の言葉だと思った。TOSHIにとってのYOSHIKIを表すのに、これ以上に適切な言葉があるだろうか。Xのリーダーでドラマーでピアニストで、作詞作曲もして……なんて、そんな説明は要らないのだ。
「パートナー」というその一言が、すべてを言い表している。

「すみれ組の、としみつくんと、よしきくん」を想像したら、自然と笑みがこぼれた。どんな子供だったんだろう。20年後、30年後の自分たちなんて思い描くはずもなく、無邪気に遊んでいたんだろうか。でもYOSHIKIはきっと、こましゃくれたお子様だったに違いない。
私が通っていた幼稚園の星組にはどんな子がいたかな、と自分が5歳だった頃を思い出してみた。

(つづく)


桜井弓月 |TwitterFacebook


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