月に舞う桜
前日|目次|翌日
朝の通勤途中、線路沿いの道を太陽に向かって真っ直ぐ歩く。その道は太陽に照らされているおかげでほんのり暖かく、辺りの景色は柔らかな黄金色だ。最近、朝は本当に寒くてどんどん冬に近づいてる感じがするけれど、その線路沿いの道を歩いているときは、まだまだ秋なんだなぁと思える。 秋は、時間の流れ方がたまに分からなくなる。時間がものすごくゆっくり流れているように感じて、「あれ? 私、こんなに急いで仕事に行ったりしないで、もう少しのんびりしていていいんじゃないのかな」と錯覚を起こしてしまいそうになる。もっとひどいときは、このまま時間が止まって何一つ変わらずにいられるんじゃないかと思う。時間を無限に与えられているような感じ。本当は、時間が無限にあったりしたら途方に暮れてしまうけれど。 角を一つ曲がったら、そこはもう日陰でかなり寒い。現実に目覚めた私は、首を縮めながら暖房の効いた職場を想って道を急ぐ。
|