月に舞う桜
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某番組に、うじきつよしさんが出ていた。サッカー好きな彼は、ドイツまで行って来たんだそうな。 ドイツでは、今回のワールドカップを「平和の祭典」と位置づけているらしい。過去を踏まえ、そんな自分たちがサッカーのワールドカップを開催できるまでになった、と。ドイツ人にとって、今回の大会は自国の歴史を振り返ると尚更大きな意味を持つのだろう。 4年前の日韓大会はどうだったかなぁと思う。日本には、ドイツのような意識はあまりなかったのではないだろうか。韓国との共同開催という点には何か重きを置いていたかもしれないけれども。 うじきさんが言っていた。ドイツ人は過去を忘れまい忘れまいとしているけれども、日本人は忘れようとしている気がする、と。 ネオナチが台頭していたり、今回の大会に絡んで外国人を排斥しようとする動きが起きるのではないかと懸念されたりと、ドイツにもいろいろと問題はある。けれども、過去を重く受け止める意識という意味では、うじきさんの言ったことは当たっているように思える。 大学の授業で、ドイツ人哲学者ヤスパースの『戦争の罪を問う』という著作を扱った。ヤスパースは、何より「ドイツ人として」あの本を書いたのだろう。ドイツ人としてあの戦争をどのように受け止め、どのように考え、どのような姿勢で敗戦後を生きていくのか、それはドイツ人ヤスパースにとって何よりも優先して語らなければならない事柄だったのだろう。その切迫した真摯さが伝わってくる本だった。 戦後、日本人は自分たちの起こした戦争と敗戦をどんなふうに受け止めたのだろう。混乱のさなかで、それでもヒステリックにではなくあくまでも真摯さと冷静さと謙虚さを持って語り合おうとした人はいたのだろうか。『戦争の罪を問う』と同じように位置づけられる書物は書かれただろうか。 私は今、無性にそれを知りたい。
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