月に舞う桜

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2006年05月29日(月) 疾走

きっと本当はヤワな人間なのだけど、ヤワな人間であることを知られたくはない。
きっと本当は泣き虫な奴なんだけど、涙なんて見られたくはない。
きっと本当は、ヤワなことも泣き虫なことも誰かに知っていてほしいのだろうけれど、自覚すれば弱くなっていくばかりだから本心には気づかないふりをする。本当に本当に知ってほしい人は、まだ私の目の前に現れていないんだし。
何だかんだ言って、たぶん私は自分のことを結構気に入っているんだろう。たまに、ものすごく嫌いにもなるけれど。
時間を追うごとに運勢が少しずつ下降していくような日は、人のちょっとした優しさや気遣いが身に染みるほどありがたい。そして私は、自分にとって大切な人だけ世界に存在していればいいのにと、ひどく身勝手なことを思う。
我が身に降りかかった些細な不運を振り払うように、夕暮れの道を疾走した。夏の気配をたっぷり含んだ風を受けながら、顔を上げて、時速6キロで。頭の中では、帰り道恒例、浜崎あゆみの『Too late』。
期間限定物に弱い私は、大事な大事なマンゴーゼリーで機嫌を直す。これで厄払いは完了。大きな果肉の入ったゼリーは、自然のおいしさが詰まっていた。疲れた体には、甘いものが効く。でも、人工の甘すぎる味は却って疲れを増すから、やっぱり天然の甘酸っぱさがいいんだ。


桜井弓月 |TwitterFacebook


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© 2005 Sakurai Yuzuki