* たいよう暦*
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2004年02月01日(日) 十三回忌

祖母が80歳の声をきくようになった頃、息切れが激しくなりました。
「もう、年やからなあ〜」
散歩に行くのも、階段を上るのも、なんだかとってもつらそうに、ゆっくりゆっくり。
行動範囲もせばまりました。
本人も、まわりの人間も「これが年ってもんなんだ」とずっと思っていました。

そんなある日、学校から帰ると母が、
「おばあちゃん、手術することになったよ」

実は息切れは、ちっとも「年のせい」なんかじゃなく、「心臓のせい」。
なんと、祖母の心臓は普通の人の半分以下、一分間に30回〜40回しか脈うってなかったのです。
風邪気味で病院にいってみてもらったら、聴診器をもった先生が
「?・・・?・・・?!」
そのまま、即検査、即入院、即手術となりました。

ペースメーカーというものを体の中に入れて、脈をうつのを助けることになりました。
「手のひらにすっぽり入る大きさですよ」
と説明されたその機械は、どういう仕組みかはよくわかりませんが、着実に祖母の心臓を助けてくれました。
手術をしてから亡くなるまでの約10年間、毎日毎日祖母の体の中で、心臓のそばで、きちんと働き続けていました。

今、私の手元にはそのペースメーカーがあります。
最近のペースメーカーはどうなっているかわかりませんが、その頃は、亡くなると、必ず骨にする前に取り外すようにと言われていました。
高温になりすぎて、爆発する危険があるからとのことでした。

祖母は、自宅でゆっくり息をひきとりました。その後病院で、ペースメーカーをとりはずしてもらいました。
それが、人間の体の中に入っていたとは思えないほど、つるりとしていて、ひかっていて、びっくりするほど硬質です。
そんな小さなものが心臓を助けていてくれたんだと思うと、なんだかとても不思議な気がしました。

きっと父も母も、ペースメーカーを取り外した後どうしたかは、葬儀の準備の忙しさにとりまぎれて覚えていないでしょう。
私は誰も興味をもたずに置かれていたペースメーカーを、「形見わけにもらおう」と勝手に決めて、誰にも言わずに机の引き出しにしまいました。

そのペースメーカーを引き出しにしまった日から13年目の今日。
十三回忌がいとなまれました。
祖母の子供や孫やひ孫があつまり、お仏壇の前で手をあわせました。

机のひきだしの中にしまいっぱなしの、ペースメーカーにも、そっと手をあわせました。
今も誰かの体の中にはこんな小さなものが入っていて、そしてその人の心臓を助けているのかと思うと、ちょっと不思議になります。
そして、その小さな機械の働きを、携帯電話の電波が邪魔をするのかと思うと、心が痛みます。

この小さな機械の働きを、どうかさまたげることのないように。
自分の携帯電話の使い方を、もう一度考えなおそうと思いました。


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