* たいよう暦*
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「ぷ、ちょーだい」 「なに?プリンがほしいの?」 「ぷ、ちょーだい」
まだ、彼女が一歳半で、片言の日本語しかしゃべられなかった頃。 冷蔵庫の前まで走っていって、一生懸命のびあがって、母親である私の友人にうったえていた。
「はい、どうぞ」 「ぷ、ちょーだい」 「えー?あなた右手に持ってるやん」 「ぷ、ちょーだい」 「あげたやん」 「ぷ、ちょーだい」 「もう、しゃあないなあ」
しぶしぶ、私の友人は小さなプリンを、もう片方の手にももたせました。
「あいがと」
プリンをふたつももらえたのがよっぽど嬉しかったのか、にこにこしながらちょこちょこ歩いてきた彼女。 うふふ。かわいいなあ〜と、私が眺めていると。
「あい」
迷わず右手にもっていたプリンを、私にさしだしました。
えーーっ?!
「あい、どうぞ」
えーーーーっ?!?
あんなに一生懸命、しゃべられない日本語を伝えようとがんばり、冷蔵庫からプリンをだしてもらった彼女。 私にプリンをわけてくれるために、がんばっていたらしい。
「これ、ふたつとも、食べたらいいやん」 「ううん、あい、どうぞ」
にっこにっこにっこにっこ。 にこにこしながら、ぷりんを差し出してくれた。
「ああ、あげるためにふたつ欲しいって言ってたんかー」 「・・・そうみたいだねえ。」
どうも、ありがとう。
あの瞬間、彼女は私の友人の子供ではなく、小さな友人になりました。 間違いなく、友情が芽生えた瞬間。
きっと彼女はあの瞬間のことは覚えていないだろうけど、私はきっと忘れないだろうなーと、思う。 その時まで、私は、友情が芽生えた瞬間というのをはっきり自覚したことがなかった。 だから、あの時が、初めての体験。
そんな友情を結んだ彼女も、きのうで6才のお誕生日。 今年の春には、ランドセルを背負って小学校に通いはじめます。
背もずいぶんのびた。 髪ものびた。 顔もしっかりしてきた。 そして、心もそれと同時に、まっすぐまっすぐ大きく育っていっている。
お誕生日、おめでとう、小さな友人。 これからも、元気でまっすぐすこやかに育ってください。
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