うそつき【美奈うさ】

転生のどこかの一場面。大人、同棲。
新年早々ド鬱ですごめんなさい。死にネタです。今年もよろしくお願いします!



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彼女の守護はうそつきの月



「もうしないよ」
彼女の言葉はいつも嘘。
「……信じるよ」
あたしも、だけど。


「笑いながら言うの」
頬杖にため息の、いつものスタイルで、いつもの相手にいつもの愚痴。
「何千年、同じ話をあたしに聞かせるつもり?」
年末年始の忙しさの中、ほんのちょっとの休みにまであたしに付き合わされてまあ可哀想とは思うけど。
でも、あたしだって可哀想だわ。
「ほんとよ、あたしだってそう思う。」
「だからね、さっさと割り切るべきなのよ。こんな話はするだけ無駄なんだって」
「本気で言ってるの?」


数えきれないだけ、あの白いドレスが血に染まる夢を見た。
あたしが覚えている夜と言う夜は、その夢の記憶。
何千年の過去、そして何千年の未来すらも、きっと。

うなされて飛び起きるその横で、あの子は少し笑って、大丈夫だよと言う。
ここにいるから、と。

ああ、あたしは、自分以外でこんなうそつきを見たことがない。


「じゃあ、どうするの? いつまでもこんなふうに同じ問答を繰り返して、同じ嘘の誓いを聞き続けるつもり?」
「ほんと、ね。……どうしようかなぁ」
突き放しながらも根気強く相手をしてくれるレイちゃんに、優しいなぁと思いながらなんとはなしに呟く。
レイちゃんが、少し驚いたようにあたしの目を見た。
「なに?」
「……何を考えてるの?」
「は? なによ、急に」
「あなたが、どうしようかななんて言うときは、大概もう何か対策を考えて決めているときじゃない」
「そう? すごい、あたし有能じゃない」
「誤魔化さないで。」
「そんな怖い顔しないでよ。別に何も考えてないから」
レイちゃんはあたしの目をじっと見つめてから、ため息と一緒にそっと顔をそむけた。
「うそつき」

ほんと、あたし、人のこと言えないよね。
あの子と同じぐらい、見え透いた嘘をついてる。




「美奈子ちゃん、おかえりー」
明るい声に迎えられても、心の闇は晴れない。
でもあたしはちゃんと笑える。
2人揃って今夜も騙し合い。
「いつもそばにいてくれてありがとう」
「なぁに、どうしたの、急に」
くすくす笑いながら、伸ばした腕の中にためらいもなく収まる。
そしてぎゅうっとしがみついて、冷えた体に温かい温度を分けてくれる。
「ううん、今年も一緒にいれて嬉しいなと思っただけ」
「そっか」
「うん」
「あたしも嬉しいよ」
「ありがとう。――ワイン、買ってきたから飲もうよ」

乾杯、とグラスを合わせて2人で一気に飲み干した。
真っ赤なワインが致死量の毒ごと流し込まれて、すぐに同じだけ赤い血を吐きだす。
霞む視界の中、うさぎちゃんが、不思議そうな顔であたしを見ていた。
2人並んで見たテレビのドッキリを眺めてるような目で。
「……ざまぁ、みろ」
震える唇から最後に絞り出した声で、彼女は理解するだろうか。
あたしの精一杯の悪戯を。




嘘つきには報いを


二度と嘘をつかないと約束するなら
二度とあたしの前で真っ赤に汚れながら死んでいかないと約束するなら
次に生まれ変わったときは、こんな意地悪をしないであげる





(嘘つきのロンド 互いに報いを与えながら 悲劇を繰り返す)

2003年03月05日(水)
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