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■ めぐるいのち【ジェダセレ】
ニレの木の下で、穏やかな顔とばさばさの木の葉を一緒くたに見上げる。 エンディミオン、とその名を呼んで、不意に切なくなった。
水面はどこまでも澄んでいるのに、底は見えない。 並んで眺めていた隣の顔を盗み見ると、こちらも心情の推し量れない顔をしている。秘密ごととは縁遠い表情ばかり浮かべる顔なのに。そもそも、ここでこうして2人で居ることすら秘密ごとなのになぜかそう思う。 見詰められてるに気付いたのか、セレニティが視線を返す。 「どうしたの?」 「どうしたのかなと思って」 ほとんど同じ言葉で答えると、セレニティは意外にも「なにが?」とは言わなかった。 そう言われることを前提で切り出したジェダイトは落ち着かない気持ちになる。 彼女の答えに、自分はうまく返せるだろうか。 セレニティは変わらず窺えない顔で、じっとジェダイトを見つめていた。 静かな時間の流れののちに、ぽつりと一粒の雨が落ちてきてジェダイトの頬を濡らした。
「いつの間に私より大きくなったの」
そちらに取られた意識の隙間に、セレニティが呟く。 ぽたぽたと雨が降り出して、水辺に佇んだ2人がじんわり濡れた。 沈黙は濡れ渡るまで続く。
海のしぶきのように力強い脚 たくましい腕 猛禽類のように鋭いかと思えば 湖のように穏やかになる眼差し
あなたも エンディミオンも ときどき知らないひとみたいに見える
低い声で名前を呼ばれると このひとは誰だろうと 思うときがあるの。
自分を守ってくれる戦士たちだって、きっと彼らより強いのに、もっと柔らかい。 目にも留まらないほどのスピードで、獣のように硬くなっていく彼らに驚いている。 目にも留まらないのは、早すぎるからか、緩やかすぎるからか、その判断はままならない。ただきっと自分とはあまりにも違うスピードで。
会ったときから自分より大きかったエンディミオンより、自分とほとんど変わらなかったジェダに抜かされるとちょっとびっくりする。 四守護神はとっくに成長が終わってるし女の子だしで、エンディやジェダの成長についていけない。 「自分と違う」ということに、自分でも気付かないくらいひそかに傷ついている。性も、種族も。
2003年01月02日(木)
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