まゆのウォーキング、ぼちぼち日記

2006年07月18日(火) としこさんをどうしたらいいのか?

昨日からの続きです。

さて、としこさんがどうやらこの当たりに
住んでいる人であるらしいことはわかったが、
それ以上のことはわからなかった。

しかし、としこさんをなんとか、
家に帰さなくていけない。
私はその方法を考えた…

そして
このお酒屋さんの女性に、
交番に電話してもらい、パトカーを
呼んでもらうことにした。
お酒屋さんの女性は、快く電話をしてくれ、
パトカーもすぐ来てくれるということだった。




やれやれ、
これで何とか大丈夫と思ったが…


後で分かるが、
これは私の大きなミスだった。



私は、外で待っているとしこさんを
パトカーが来るまで引き止めておかねば
ならなくなったが、としこさんは、
「その角、まがったら家だから…」
と言って、歩き出そうとする。

「うん、わかっているけど、ちょっと待って」
「あのね、その角を曲がると家なの」
「うん、分かってるよ…」
そんなやりとりをしていたら、
お酒屋さんの女性が、
「もし良かったら、このイスにかけて
 休んで行きませんか?」
ととしこさんに声をかけてくれた。

「あら、としこさん、ちょっと休もうよ。
 雨も降ってるし」
と、私と女性は、としこさんを
店の中に誘ってイスに座らせた。

イスに素直に座ったが、としこさんは
不安そうな顔をしていた。
「大丈夫だよ、安心していいよ」と声をかけると、
私の手を握ってきた。そして、こう言った。
「あのね、靴下買ってきたんだよ」
「そうだね、さっき買ってきたね。
 そういえば、としこさん靴下はいてないけど、
 これ、はくのはどう?」
「いいや、いい…」

「としこさん、家族は何人?」
「息子と2人暮らしなの」
「へぇ…息子さんの名前は?」
「●●●って言うんだよ」

などと、私は、パトカーが来るまで、
何とか引き止めようと、いろいろな話をした。


そして、何気なくこう聞いた。
「としこさん、住所分かる?」
「うん、わかるよ。○○町○○番地。」
としこさんは、スラスラと
自分の家の住所を言ったのだ。



私は、しまった!と思った。


そうだ、どうせわからないだろうと思って、
住所を確認してなかったのだ。
しかし、としこさんは、住所を暗記していたのだ。
そこで、もしかしたらと思って
電話番号も聞いてみた。


「ね、電話番号は分かる?」
「うん、○○○○の○○○○だよ」
「え、そうなの?」
なんと、としこさんは、
電話番号もスラスラと言ったのだ。



私は驚き、お酒屋さんの女性に、
「電話番号分かりました」
と言うと、その女性が
「はい、控えますから、
 もう一度聞いてください」
というので、私はもう一度聞いた。

「としこさん、もう一度電話番号教えて」
「○○○○の○○○○」
「○○○○の○○○○ね」
お酒屋さんの女性が、それを聞いて控えて、
そして、すぐにその番号に電話をしてくれた。


すると… 


その電話に、息子さんが出たようだった。
もしかしたら、電話を待っていたのかもしれない。
お酒屋さんの女性は、事情を説明すると、
息子さんは、すぐに向かえに来るということだった。


やれやれ…
これで、一安心。



しかし、交番に電話をしてしまっているので、
これを今度は断ることにした。
もうそろそろパトカーが着く頃であったが、
再び交番に電話をしてもらった。
そして、事情を話して断った。
しかし、もう出てしまったということだった。

とりあえず、パトカーも息子さんも待とう、
と考え、私は再び、としこさんと話をした。
としこさんは、73歳だと言うことだった。
そして息子さんは42歳。
何か商売をしているらしかった。


15分ほどして、一人の男性が入ってきた。
としこさんの息子さんであった。
(どうみても42歳には見えなかった)
自分の傘と、としこさんの傘を持ち、
大あわてでやってきたらしかった。

息子さんの姿を見ると、
としこさんはホッとした表情を見せた。



「ああ、どうもすいません…」
息子さんは、私たちに詫びながら、
「さぁ、家に帰ろう…」と促し傘を渡した。
息子さんは淡々としていて、別に驚くそぶりもなかった。

としこさんは、
「あのね、靴下買ったの」と言い、その袋を見せ、
ゆっくりとイスから立ち上がり、
息子さんと一緒に店を静かに出て行った。
私は、としこさんに、
「気をつけて外に出てね…」と声をかけたが、
こちらを振り返ることはなかった。

こんな2人でした。
恐らく、息子さんは、こんなことを何度となく
繰り返して、慣れているのだと思った。





お酒屋さんの女性と
「よかったね、息子さんが来てくれて」
とホッとして、言い合った。
そして、2人でパトカーを待つことにした。

すると、間もなく、
パトカーが店の前に来て、お巡りさんが降りてきた。
私たちは、事のなりゆきを話して謝った。
私がちゃんと、住所と電話番号を聞いてみれば
よかったのだ。


すると、お巡りさんが、
「いや、その方は、前にもパトカーで
 何度か向かえに来た覚えがあります」
ということで、としこさんは以前も
どこかで迷っていたことが判明した。



どうやら、としこさんは、
何度かパトカーに乗っているらしかった。
なんにせよ、ともかく一件落着である。
私は、お巡りさんと、お酒屋さんの女性に
お礼を言って店を出た。


そして、今日。
偶然、NHK教育テレビで、認知症に関する
番組があったので、見てみたら、
「散歩は私の生きる楽しみ。
 そうでないと息がつまるから」と
認知症の方が言っていた。

としこさんは、恐らく、認知症だと思うけれど、
毎日家にいるのだったら、外に出たくもなるだろう、
だから、出てしまうのだなぁと思った。

ともかく、認知症の方も、体の不自由な人も、
自由に歩ける世の中になるといいのになぁと
しみじみ思ったのでした。



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