言の葉孝

2007年11月12日(月) 24000円の行方

 金曜日、麻雀をしに行った日の話である。
 僕は、銀行によってお金をおろした。24,000円である。なぜそんな中途半端な数字を出したのか、という疑問はさておき、ここで僕は大変な失態を犯した。

 カードは受け取った。
 通帳がないので残高を確かめるために明細も出した。

 しかし、お金を取り出していなかった。

 自分はドジを自任しているが、今回のは稀に見る大ドジだ。警報が鳴ったはずだが、それにも気がつかなかったものである。
 すぐに気がつけば取り出せたのだろうが、あいにく気がついたのは麻雀を堪能して、始発まで一休みするために会社に戻ってきた翌日の午前3時だった。

 土日は銀行が休みなので、そのまま事態は放置されていたのだが、月曜日の今日になって、昼休みにお金を引き出した銀行へと向かっていった。窓口が混んでいたのであるが、警備員のおじさんが事情を聞いてくれた。
 すると、「ここにはない。たぶん防犯カメラを見れば分かるが、警備は別の会社がやっているので、警察に届け出なさい」と、言われたものである。

 そんなわけで、会社のビルの中にあった交番に行った。届を出せば警備会社に連絡を取って防犯カメラの確認をしてもらえると思っていたのだが、交番で取り扱えるのは遺失物届であり、盗難による被害届は受けられないのだという。
 遺失物届けは、出しておけば遺失物として届けられたものが自分のもとに帰ってくるし、今はなくても後々出てくれば連絡をしてもらえる。しかし、あくまでも偶然出てこなければならない待ちの処置であり、おとしたものを探してくれるような能動的な行動は期待できないのだという。
 盗難となれば捜査という積極的な対応も望めるのだが、かといって、お金を引き出した時周りには誰もいなかった。だから、誰かが盗んだ確率は低く、また交番では被害届は受理できない。きちんとした警察署に行って相談しなければならないのだそうだ。
 となれば、直接警備会社の方に掛け合って、防犯カメラの確認をしてもらうのが最良だろう。

 しかし、そんなことをしなくても事態はあっさりと解決してしまった。
 銀行のほうから電話がかかってきたのである。

 曰く、あの日、監視をしていたところ、僕がお金を取り忘れたことに気がついた警備会社の人が遠隔操作でお金を取り込んでくれたのだという。
 通帳の方も、あの日僕が取り出さなかったのと同じ状態に戻してあり、結果として24,000円は戻ってきたのである。

 ということは、何か。
 あの親切そうな警備員のおじさんは確かめたふりして結構テキトーなことを言っており、おかげで僕は警察沙汰という貴重な体験をすることができたというのか。
 警察にはいかなきゃいけないわ、銀行から会社の方に電話が入っているわで、結構な騒ぎになってしまったではないか。

 しかし、ATMに忘れたお金は取られないとそのまま口座にお金が戻るとは初めて知った。要らない知識であるが、ひとつ賢くなったものである。生涯自分のためには役に立ってほしくない知識ではあるが。


 ちなみに―――引き出した24,000円は10月分の麻雀の負け分であり、どのみち消えゆく運命だった、というオチがついたりするのである。


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