読書記録

2020年07月31日(金) 白秋期 地図のない明日への旅立ち / 五木 寛之


人生を、青春、朱夏、白秋、玄冬の四つの時期に分けて考える。

白秋期は晩年ではない。フィジカルにはさまざまな問題を抱えていたとしても、いまの五十歳から七十五歳までの時期は、むしろ人生の収穫期(ハーベスト・タイム)ではないかと、私は思う。

私は戦後に青春期を送った人間です。その人間にとって、家族の絆とか、血縁の絆とか、地縁の絆とか、そういうものから逃れて自由な個人として生きるということが、一つの夢でした。ですから絆というのは、自分を縛る欝陶しいものという感覚が強かったのです。いまさら「絆」などと言われても、という気分がどこかにあります。
白秋期の黄金を手に入れるには、「絆」ではなく、孤立しても、元気に生きていくという道を考えるべきだ、と思うのですが。

白秋期は、子供たちも大きくなった、ちゃんと家も残した、やるべきこともある程やった。こういう人びとが、現役から退いて林に住み、そこで来し方行く末を考え、人間とはいったい何なんだろうということを思索したり、自分の求める場所に行ったりして暮らすことができる季節です。


げに気になるには、自分の天寿です。それまでの時間を、自分自身のために使う。それが「白秋期」の目的ではないでしょうか。





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