読書記録

2020年06月06日(土) 火定 / 澤田 瞳子

今、新型コロナで世界中が困難に立ち向かっている中で、偶然目にした物語。


奈良時代、若き官人である蜂田名代は、施薬院の仕事に嫌気が差していた。
ある日、同輩に連れられて出かけた新羅到来物の市で、房前の家令・猪名部諸男に出会う。施薬院への悪態をつき、医師への憎しみをあらわにする諸男に対して反感を持つ名代だったが、高熱に倒れた遣新羅使の男の面倒をみると連れ帰った行為に興味も抱く。
そんな中、施薬院では、ひどい高熱が数日続いたあと、突如熱が下がるという不思議な病が次々と発生。医師である綱手は首をかしげるが、施薬院から早く逃げ出したい名代は気にも留めない。だが、それこそが都を阿鼻叫喚の事態へと陥らせた、 豌豆瘡(天然痘)の前兆だった。

この病で政治の中枢にいる藤原4兄弟も犠牲になっているのだ。

流行り病を逆手にとってしたたかに生きる者もいれば、何とか病気から逃れようとする者、やみくもに宗教やなにやにすがりつく者、人生をはかなんで狂ってしまう者、巻き込まれていく子供たちそしてそんな人たちを必死に救おうとした者・・
姿の見えない恐怖に向き合わざるを得ない人間のあらゆる業を表現した物語。

なかなかに読み応えのある作品だった。




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