中国で初のノーベル文学賞をうけた高行健(ガオ・シンヂェン)の、 台湾で出版されたという短編集。 その中から高行健が選んだ六編、訳者が追加した二編の計八編が収録されている。
〇母 労働改造農場で命を落とした母の葬儀に参列できなかった親不孝な息子の回想。
〇円恩寺 新婚旅行中の男女が古寺を訪れる話。
〇公園にて 再会した元恋人の男女が講演で語り合うほとんど会話のみの話。
〇痙攣 海水浴中に痙攣を起こして生と死の狭間を漂うときの心情。
〇交通事故 交差点での衝突事故発生から再び平静に戻るまでの話。 人間の存在や事件がいかにちっぽけなものであるか。
〇おじいさんに買った釣り竿 妻子と都会で暮らす現実空間の中で、おじいさんと暮らした少年時代を思い出している。
〇瞬間□がとらえた風景と幻想の断片をつなぎ合わせた作品で、私にはよく分からない。 ストーリー性がどうしても読み取れなくて、難しいと感じた。
〇花豆━結ばれなかった女へ 50歳の誕生日を迎えた男が、お互いに好意を抱きながらも 結ばれなかった幼なじみの女性・花豆(ホアトウ)に語りかけている。
はっきり言って私には取っつきにくい作品ばかりで、でもタイトルになっている「母」だけは共感できる部分があった。 高行健の母の思い出が描かれているのだが、たいていの人間は母を亡くしたあとに自分は親不孝だな、と感じるのだろう。
抒情がこころにしみる。 詩情はひたひた胸にあふれる。 文革という時代から逃れられない、 あまりにもみずみずしい青春。
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