コミュニケーション。
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2007年01月26日(金) 選択





峰氏は、現れた。
いつものように、
あたしは車のナンバーでそれがわかった。


周りを見渡す。
常連のおばさんとその娘。
もう一通り品定めを終えて、最後の確認段階だった。
いつものように、選ぶのが速い峰氏。


彼が早いか、親子が早いか、
実に微妙であった。


親子が早ければ、他に客はおらず、
あたしは、恥ずかしがることも気にすることもなく、
峰氏に、
「メルアド教えてくれません?」
と聞けた。


が、親子の特徴は、行動が遅いことであって、
熱いコーヒーを買うか否かでもめていた。
ここであたしは、
心置きなく言うことを諦めた。



負けていられない。
今朝お兄さんと打ち合わせしたときに、
そういう事態も考えてあった。
そのときは、
「峰さん、ちょっと待っててくれませんか」
と言うしかないとなっていた。

だってあたしのバイトは、
今日を含めて残り5日間しかないのだ。
しかも1日たった3時間。
峰氏が来たチャンスを逃してどうする。

大体、この親子は常連で、顔なじみだ。
かといって仲がいいというわけでもない。
この親子の前でメルアド云々は恥ずかしい。




だからあたしはとりあえず、
何気ない顔をして、世間話を始めた。


「あたしね、今月でバイト終わりなんですよ」

「あ、そうなんだ、辞めちゃうんだ?」

「え、辞めちゃうっていうか、ここ(コンビニ)閉めるんで」

「は?!」




…いきなり不測の事態。
閉店の告知を貼った後も峰さんは来たし、
前回来たときにちょっと触れたから、
閉店を知ってるかと思ったのに、
彼はまったく気づいてなかったのだ。



「やだなぁ峰さん、そこに貼ってあるじゃないですか」

「えー、それは困る、困るよ」



この時点で、会計も袋詰も終わっていた。
親子は品物を机に置き始めていた。

さぁ、やっぱり言うしかない。



「はい、お釣りですね。

あ、あの、峰さん、ちょっとその、待っててもらえませんか」



あたしのこの声は、
いつもの半分くらいだったと思う。
恥ずかしさと、後ろの客が気になるのと、
混ざってしまっていた。
峰さんだけに集中出来ていたら、
きっと、
彼に聞こえるだけの声が出ていたはずなのに。


彼は、

「困るなぁ、困るなぁ」

と言いながら、
いつもの笑顔を残して、店を出てしまった。




…聞こえないふり、をするような人じゃない。
それなら、煙草の自販機の前で喋ってくれたりは、しないはずだ。
自分から、
「このビール、美味しいよ」
なんて、話しかけてくれたりはしないはずだ。


多分、聞こえていなかったのだ。
店の近くに住む峰さんにとって、
ここが閉まるというのは本当に困ることで、
それが頭を占めていたんだと思う。



でも。
親子の会計を終わらせて、一息ついたら、
泣けてきてしまった。









カメラマンと会う約束があった。
どうしても会う気になれなかった。
今から、彼の仕事の話や、観た映画の話を聞いたり、
その映画のDVDを押し付けられたり、という時間を、
笑顔でやり通せる気がしなかった。


会えない旨をメールで送って、
ひたすら自転車をこいで、
藤原君が待っている家に帰った。




***************





カメラマンに会えなかったのには、
もう一つ理由がある。

それは、今日、
ダレカさんが店に来たこと。



相変わらず強引で、
あたしの都合などお構いなしで、ぶっきらぼうだった。
でも、この人に会いたかったあたしが、
いつになく笑顔で接していたら、
ちょっと嬉しそうだった。

あたしを何も知らない分、
だからこそ何の感情もなく接してくるなぁ、この人は、
と思っていたけど、
多少はこの人も、あたしのことを好きみたい。

ここ数ヶ月は、
この人に対してつっけんどんな態度しかとっていなかったから、
あんまり好かれてないと思ってたんだろうなぁ。



そうして、あたしは実感する。
この人に好かれたほうが、嬉しいと。




カメラマンとこの人、
どちらがあたしのことを知っているかって、
それはいい勝負だ。
だってどちらにも、あたしはあたしを見せていないから。
だから、あたしの好みが出てくる。
どちらにあたしを知って欲しいか、となる。
それは、
どちらにあたしが深入りしたいか、とも言える。



やっぱり、ダレカさんなのだ。
そして、実際深入りするかは別として、
カメラマンを選んでいないのが重要だ。
カメラマンは、あたしを本当に好きになってくれて、
大事にしてくれ、
あたしを喜ばせようと頑張ってくれるのに。



店を辞め次第、
カメラマンには別れを告げる。




***************




はい、硬い日記終わりー。


いやー、久々にダレカさんに会ったのは、やばかったね。
この人への感情は振れ幅が大きいし、
基本的には「きらいー」が多いけど、
強引にあたしの手を引っ張るところは嫌いじゃない。
きっとそれは、タイミングとか、引っ張り方とか、
遊び人しか出来ないような巧さに酔いたいのだと思う。

小悪魔に遊ばれてるようなもんですかねw
前にも書いたけど、
女を操るのが巧いのだ。

よくも、
あたしが男と別れたことや、
あたしと遊んでも面倒にならないことを見抜いたな、と思う。
あれは遊び人の嗅覚なのだ。


男と遊ぶ、という世界に、
あたしをスカウトしたようなもんだなww
と、藤原君と笑った。





ダレカさんは、カラオケが上手い。
ってか声がいい。めろめろ。

カメラマンは、カラオケには行かない、って言ってた。
聴くのは好きだけど、歌うのには興味ないみたい。




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カメラマンは絶対Mだと思う(ハジけすぎ)




雪絵 |MAILHOMEBLOG

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