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日々闇雲日記。

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2006年01月28日(土)
間違っても不幸なんかじゃない



 どうも。
 ようやく半年前に某広告制作会社の事務(正社員)という安息の場を見つけたと思ったら、いきなりクビ事態発生人生エマージェンシー、その転落振りも我ながらアクロバティックと思った管理人です。
 またも根無し草人生に逆戻り。
 いくら会社が会社だからって、ついてねー。
 怒ったり励ましてくれたり慰めてくれたりしてくれた家族と知人友人様がた、この場を借りて感謝。
 何とか立ち直れそうなので、本当は書いていいのかもわからず、また正直書きたくないのだが、経緯の覚え書き。

 昨日の午後イチ、職場近くの喫茶店で、上司と私が差しで向かい合ったと思し召せ。

「業務上の失敗ではない、一生懸命やってくれているのはわかる」
「仕事で迷惑を掛けられた覚えもないし、会社が不利益や不名誉を被ったわけではない。引き継ぎ3日で仕事を始めて貰って、大変なのは分かっている」
「ただ細かいところで、当社からの要望に応えられないのではないか」
「長く勤めようという意思を聞いて、むしろ不安になった」
「今でさえ無理してもらっているのに、これから会社が大きくなろうという時に、これ以上Mさんに無理をかける訳にはいかない」

 解雇じゃん。思いっきり不当解雇じゃん。

 思い当たる事もないではない。
 朝から直行で営業外回りしてから会社に出てくるなら「帰社」と言うべき所を、電話口で「出社」と言ってしまうとか。
 本社に領収書をそのまま1枚ずつFAXして、社長の前で紙を無駄遣いしてしまうとか。宅急便を「間に合わない」という理由で、受付時間が遅いとはいえ高いサービスで送ってしまい、
「翌日でよかったのに何で経費の無駄遣いするの!」
 と本社経理のおばちゃんに怒られたりとか。
 つまりはそういう1回や2回なら見逃せる細かいポカでも、何度も何度も重なってしまい、私から与えられる不安が累積してだんだん許せなくなり、ついにはどうしても耐えきれなくなったんだろう。
 確かに、納期ギリギリでこれでもかとテンパっている時に、

「先月締めの請求書が今頃来ているんですが、どうしたらいいですか?」

 などと私に助けを求めてこられて、「今更払えない」という本社のキッツイおばちゃん相手と「払え」と言うエキセントリック爺さんとの折衝役に駆り出され、自分の仕事以外の時間を使わされれば、そりゃあイライラもしたろうさ。
 あまりの要領の悪さに、

「いい加減にしてくれ」

 とも思ったろうさ。
「だけど、引き継ぎ3日、教えてくれる人間ゼロ、期間半年足らずで満足に出来るわけないだろう!」
 とか、
「前任者のように、法務関係の契約書サインから飲み会の手配まで、いたれりつくせり痒いところに手が届いて、いちいち職人たちの顔色窺って機嫌を取れる事務ばっかとは限らないだろ!」
 とか、
「指示はろくにしないくせに曖昧でイメージのいい言葉ばっか連発しやがって、臨機応変てなんじゃコラ!」
 とか、
「イライラさせているのは私のせいだけじゃないんじゃない。あんた含めて本社や他の人の色んな思惑が絡んで皆が好き勝手言った結果、しわ寄せが私に来て私が右往左往するしかなかったんじゃボケ!!」
 とか、
「私に不満があって解雇するぐらいなら、何故今まで注意や訓戒もしなかったのか?どんなにソリが合わなくても、上司ならそういう努力を放棄していいのか?」
 とか、
「雇用契約書のない契約といいサービス残業といい賞与でない賞与といい経理の抜け穴の数々といい、グレーゾーン多すぎだけど、そこまで滅茶苦茶していいのか?」
 とか、
「いわゆる「性格の不一致」とか「適性」とかの問題は、入社選考の時点で吟味されるべきであり、3ヶ月の試用期間もとーっくに過ぎている今、簡単に労働者を解雇していいという話にはならんだろ?」
 とか、
「無論、当人に黙って後釜の応募をかけていいという話にもならんですよ。何のための試用期間であり、何のための正社員(終身雇用)なのか?」

 とか、そりゃーもー言いたいことは色々あるが、今ここに書いただけで全部胸にしまって去る。
 助けを求めた訳じゃないけど話を聞いた会社の人は、

「この会社は結構人が辞めさせられていく会社だし、私も似たような経験はある」
「けど、私はここの会社に雇われているから、そのやり方を『ひどい』とは言えないし、出来ることは関わらずに黙って見ている事だけ」

 私が彼女でも同じ返答をしたかもしれない。
 いや、したと思う。
 むしろ彼女は(少し)泣いてくれただけ(そう思う私はとてもお人好しかもしれないが)、思っていたよりずっと善良だったのかもしれない。
 そう、私はツイてないかもしれないけど不幸なもんか。
 身体だって五体満足だし、まだ若い。明日から収入がなくなる訳じゃない。
 怒ってくれる家族だって励ましてくれる友達だっている。背負うものもない。
 もう経理のおばちゃんに怒鳴られたり、「私は悪くない」と思いながら本社と爺さんの板挟みになったり、子リスの思いつく我が儘や、爺さんのエキセントリックぶりに振り回されなくてもいいんだ。
 もう「これはどうやるべきなのか」「これは私がやるべき事なのか」「それはどういう事なんだ、あの人は何をどうして貰いたいんだ」と、毎日毎日、地雷原を踏むような思いで迷ったりしなくていいんだ。
 今、私の身の上に起きていることは、許される事ではないけれど、実はよくある事なのは認めざるを得ない。
 だけど、それがさも自分が世の中で一番不幸みたいなしゃっ面をして立ち止まり、時間を無為に空費するほど暇でもなければ、前の会社の並み居る慰留を蹴ってまでその会社を選んで、今日まで「この会社で長く働こう」と思って働いていたのはまぎれもなく自分であるわけで、拒まれた瞬間から掌返したように罵倒の限りを尽くし、自分を腐らせていいのか?
 全ては自分のため。

「業務は一生懸命やらせていただきましたし、残業も頑張らせていただいたつもりですが、その上で会社としての判断が今回のような事であれば、もう私にはどうしようもありません」
「どうぞ今回の応募から、会社の要望に合う方をお探し下さい」

 言ってやったわよ!!
 ああ、涙ながらに言ってやったわよ!!それ以上何を言えっていうの!!
 前妻恋しさに後添いが見劣りして見える心理で、お前が私の前任みたいな「託児所のお姉さん」「気配り屋さん」「オールラウンダー」「菩薩の慈悲心とカミソリの有能さを兼ね備えた事務」を求めている事ぐらいわかってるんだよ、だけどその彼女の話をすると誰もが言うんだよ、

「そんなん滅多にいない」
「そんな仕事までするのって、事務?」
「だから彼女、辞めたんじゃない?」

 と!!
 だったら気の済むまでお気に入りの事務をお探しやがれ!!何なら前任に帰ってきて貰えば?!「お前はもういらない」と言われた以上、そっから先は私の知った事じゃねえし引き継ぎもしねぇ!!
 そしたら野郎、

 うなずきやがった。こっくりと。

 ばーか!ばーか!!
 お前は厭味を言われている事にも気づかないのかばーか!!お前なんか、お前なんか、さっさと深夜の仕事場で血反吐吐いて過労死しちまえうん○たれ――――――――!!!
 そこで実は涙は引いたのだが、場も持たない事だし言葉は続かないしで、とりあえず泣き続ける私に、上司もさすがに気まずくなった(というか邪魔くさくなったと見た)らしく、

「今日はもう帰っていいから」

 と言って逃げたので、帰り道に途中下車してミナミに寄り『パイファクトリー』でケーキ2個をガツガツ食って、

「どんなに悲しい時でも、うまいものはうまい」
「うまいものは人を幸せにする」

 とあらためて確信し、ネットで場所を調べておいた大手派遣会社に登録に行き、「まだ(私が働ける時期からの)仕事が来ていないので、3月に来てください」と言われて帰る。
 さらに電車に乗って再度途中下車したところの職安に寄って求人を見て、でかい本屋をハシゴしながら夕方までブーラブラ。その時この5ヶ月、本をほとんど読んでいなかった自分に気づき、本の匂いに安堵する。
 そこでたまたま平積みから手に取ったこんな本にいたく感銘を受けて買い、喫茶店でまるまる1冊読破してかなり元気づけられて、帰宅。
 事の顛末を話した家族が全員、「金なんて何とかなるからそんなクソ会社こっちから辞めっちまえ!!!」と笛吹ケトルのように耳から「ピー」と煙を出して怒ってくれたのに元気づけられる。

 そして決めた事がある。

 つづく。