『庭の話』

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タカラダニな季節

それは見るからにダニであって、しかも真っ赤なのです。
だから血でも吸ったように見えます。それが庭一面に居るのです。
季節は6月、庭真っ盛り。作業に精を出す庭師がすっかりびびる様にそれは
現れるのです。彼らの名はタカラダニ。やっぱりダニでした。

タカラダニの発生期間は短く、わっと現れてわっと居なくなります。何処へ行って
しまうのか誰にも判りません・・・いや調べれば判るんだろうけど、調べてないので
判らないんです。
大事なのは タカラダニが見た目ほどには凶悪ではなくて、血も吸わないし特に人にも
植物にも悪さはしないらしいと言う事です。
彼らは何故か、そろそろ昼間は熱くなり始めたブロック塀の上にいます。もぞもぞと
大量で真っ赤な状態で動いているので発見するとぎょっとします。
カモミールの花を摘むと、中心部にびっしり居て真っ赤になっています。
彼らは花粉を食べているらしいのです。びっしりとは居ますが、やっぱり結局ダニなので
食べる分も知れているんでしょうか。コガネムシ君たちの食害に比べれば、無いような
もんだと言って良いと思います。
初めて見た時はそれでも驚きました。行きつけの、地方大手花屋さんに出かけて
「すみませ〜ん。なんか真っ赤なダニみたいなやつがいるんですけれど」
「ああ、それね〜。今年はそれ一杯居るみたいだね」
年によって大発生する事は解りましたが、何かまでは判りませんでした。
インターネットは便利です。調べたら案外直ぐに正体が解りました。そりゃあ直ぐに
調べましたさ、だって怖かったんだもん。
シオヤアブと言うアブが大量発生した時も調べました。これは大きくて毛が生えてるし
いかにも刺しそうでもあるし。でもこれも滅多に刺さないそうで、無視していれば
自分でやりたい事をしている様子です。
タカラダニも同じで、彼らの陣取っていない花を選んで摘むようにしていれば
そのうち居なくなってしまいます。
彼らは有機質の多い土壌に大発生するようです。堆肥とかたくさん撒いちゃうと
タカラダニがやって来ると言うわけですね。でも有機質が少ない土は、タカラダニ
以上の
困り物なので、これはもう共存して行くしかないです。アブラムシより小さい彼らは
わらわらとやって来て、ブロックの上で日向ぼっこをして、カモミールの花粉を食べて
本格的な夏を前に一匹もいなくなってしまいます。
来る年と来ない年があるようですが、彼らが行ってしまった後は「夏が来るんだな」
と言う思いと同時に、やっぱりどことなく一抹の寂しさを感じてしまいます。

人を噛まないらしいから、こんな呑気な事言ってられるんですけどね。


管理人 焙煎 |午後からガーデン