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2021年03月14日(日) 紙の書籍に憧れる 〜個人出版という選択〜

※ 前編はこちら

「あなたの原稿を本にします」という電車の中吊り広告を見て出版社に話を聞きに行ったら、想像していた金額の何倍もの費用がかかるとわかり、あきらめて帰ってきた……という話をサイトに書いたところ、読み手の方からメールが届いた。
「日記を書籍化してくれるブログがありますよ」
いまでこそ、記事を製本するサービスはブログに当たり前のようについているが、十五年前はそうではなかった。周囲にweb日記を書籍化した人が何人かいたが、みな自費出版で本を手にしていた。それがそのブログを利用すると一冊三千円で本にでき、しかも一冊から注文可能だという。夢のような話ではないか。
さっそく教えてもらったブログに飛び、驚いた。ほかのところで書いている日記を本にするために登録したという人がたくさんおり、彼らは大満足の様子で“著書”を紹介していた。
「すごい、この価格でこんなちゃんとした本ができるなんて」
書籍化の夢が再燃した私は、サイト開設五周年の記念にそこでつくってみることにした。
三か月分の記事が一冊になるというので、私はそれまでに書いた八百を超えるテキストの中からお気に入りを九十一話選んだ。そして待つこと二週間……。

サイズは文庫本をひと回り大きくしたくらい。三百ページの文庫本よりもやや分厚い。持ち歩くのに支障のない大きさ、重さだ。おそるおそる中を開く。
「まあ、本当に私の書いたものだわ……」
当たり前のことにじいんとする。一字一句違わぬ文章なのに、パソコンで読むのとは雰囲気が違う。横書きであるが、とくに違和感はない。モノクロであるが画像もきれいに表示されている。
カバーがないから、書店に並んでいる本と比べたらそりゃあ見劣りはする。しかし、巻末にはちゃんと奥付があり、「本書の無断複写・複製を禁じます」というおなじみの一文も入っている。ページを繰るごとに喜びが込み上げてきた。

そして、その製本サービスにはうれしいおまけがついていた。つくった本をそのブログ内のストアでオンライン販売してくれるのだ。
私は出版相談会で共同出資での出版を提案されたが、初版分を売りきるだけの商品力が求められるため、出版社からコントロールされる部分が生まれることを知った。思い通りの内容にしたいなら自費出版を選べばよいが、高額の費用がかかる。それで一度は書籍化をあきらめたのだけれど、このブックストアなら自分が好きなようにつくった本を販売できるという、おいしいとこ取りができるのである。しかも、注文が入ってから製本するから、在庫を抱えるリスクもない。
こんなすてきなサービスがあるなら、ほかの書き手の方にもお知らせせねば!それに、ちょっぴり宣伝もさせてもらおうかしらん。
というわけで、サイトに本の紹介ページをつくったところ、思いがけずストア内でベストセラーになった。一丁前に“印税”なるものが発生し、わくわくしたっけ。
二冊目はサイトの百万アクセス達成記念につくった。ここまで来られたのもいつも読みに来てくれる方々のおかげ。この感謝の気持ちを形にして伝えたいと思い、その本を希望者にプレゼントさせてもらうことにした。そこで、ちょっとした企画を行い、当選した二十四名の方に送付したところ、「私も自分の本がほしくなりました」というメールがいくつも届いた。
パソコンを開けば同じ文章がそこにある。でもやっぱり紙で読みたい、手元に置いておきたい------書き手同士、その思いを共有できてうれしかった。



二冊目以降に更新したテキストもたまっているし、そのうち三冊目をつくりたい。さて、今度はどこのブログのサービスを利用しようかとインターネットで調べていて、驚いた。
冒頭に「いまは多くのブログに製本サービスがついている」と書いたが、それどころの話ではなかったのね。「自分の本をつくって出版する」ことのハードルがうんと下がり、誰でも簡単にそれができる時代になっていたとは知らなかった。
それは「個人出版サービス」という新しい出版形態で、出版社と契約を結ぶ自費出版とは別物らしい。原稿を出版社を通さず本にし、Amazonで販売できる。取り寄せで全国の書店で購入することも可能だ。本の価格は著者が自由に設定できるところもあれば、ページ数で決まるところもあるが、印税はどこもだいたい十パーセント。受注生産のため、まったく売れなくても困ることはない。そしてなんといってもありがたいのは、それにかかる費用が無料か、せいぜい五千円程度ということである。

そこで、私はそのサービスの中で説明が一番わかりやすく、かつ親切そうだと感じたムゲンブックスというところに登録してみた。
ためしに前回の日記を入力しイメージを確認したところ、縦書きで本当に「本」という感じ。こんなことが無料でできるなんて、出版社に話を聞きに行った頃とは隔世の感がある。
三冊目はここで、と決めた。いまこれをお読みで、自サイトの書籍化に関心がある方がいらしたら、参考にしてね。

【あとがき】
ところで、本文に「印税が発生してわくわくした」と書きましたが、実際には受け取っていません。何度請求しても、なしのつぶて。どういうことかしらと思っているうちに、本の販売サービス(ストア)が終了してしまいました。ブログサービス自体は現在もあるので、メールが届かないはずはないのですが……。
そのこととは関係ありませんが、原稿を本にはしたいけど、販売には消極的な私です。個人出版サービスでその選択が可能なら(たぶんできない)、販売はしないなあ。1・2冊目をつくったときには深く考えなかったのですが、出版社と契約をしないということは原稿をチェックするのも自分だけだから、無知によるトラブル(著作権侵害とか)が起きないとも限らない。個人出版サービスには在庫を抱えるリスクはないけど、そういうリスクはあるんですね。
まあ、素人の本がAmazonで売れるとは思えないから、ほとんど無用の心配かもしれないけれど。