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2007年11月27日(火) 招かれざる客

職場の昼休み、「お歳暮」の話題になった途端、ひと回り年上の同僚がぷりぷり怒りだした。毎年この時期になると夫宛てに何件か到来物があるのだが、中にひとりものすごく図々しい人がいるという。
「うちにお酒を飲む人間がおらんことを知ってて、いつもビールやらウイスキーやらを贈ってくるねん」
どういうことかと思ったら、その知人は正月にお年賀も持たずに年始の挨拶にやってきては、先だって自分が届けた酒を所望するらしい。
「最初から自分が飲むつもりで贈ってきてるんよ!」
そして、おせちだなんだとたらふく食べて帰るそうだ。
いったいどういう神経をしているんだ、と彼女が言うのを聞いて、別の同僚が「常識のない人っているよねえ……」としみじみ頷いた。
現在のマンションに引越してきてまもなくの頃、休日にくつろいでいたら夫の友人から電話。家族で近くまで来ているから家に寄りたい、昼には着くと言われ、大慌てでスーパーに走った。やってきた一家は案の定、食事を済ませておらず。
「時分時に家族総出でやってきて手ぶらって、ちょっとそれはないんじゃないの」
と彼女。
手土産があるだのないだのと言うとせこいようだが、なにも菓子折りがほしいわけではない。よそのお宅を訪問するのにその程度の気配りもマナーも持ち合わせていない人が、家人にとって「ぜひまたいらしてね」と思える客になるわけがない、という話である。
転居のお知らせハガキの「近くにお越しの際は……」を真に受けて本当にお気軽にやってくるこういう人がときどきいるから、これからは“あらかじめご連絡の上”という文言を加えたほうがいいかもね、ということで意見が一致した。

* * * * *

私の家にも夫の友人や同僚が来て夕飯を食べたり泊まったりすることがあるけれど、みなたいていその日飲むお酒は持参するし、「奥さん、どうぞ」と私のために甘いものを買ってきてくれる人も少なくない。いまのところ「あんな人、もう二度と連れて来ないでよ!」と夫に訴えねばならなかったことはないので、私は夫の客人を招待するのは嫌いではない。
だっていろいろな人がいておもしろいんだもの。
朝、布団を畳む人もいれば、起きたままの状態にしている人もいる。帰り際、「ごちそうさまでした」を言う人もいれば、言わない人もいる。遠慮をして猫をかぶっていても地は出るもので、家で彼らがどういう「夫」をしているかが垣間見える気がするのだ。
だから、私は夫がよそのお宅にお邪魔するときはもちろんのこと、独身の友人のところに泊めてもらうときでも「なにか持って行ってちょうだいよ」「ちゃんとお礼を言ってね」と言って送り出す。そのあたりの常識は持ち合わせている人なので心配はないのだけれど、わが家にやってきた客人のことを思い出すとつい余分な口を出してしまう。

もっとも、気が利かないのは男性にかぎったことではないけれど。
友人の家に何人かで遊びに行くことになったとき、デザート担当を買って出た女性が百円ケーキを持ってきたときは驚いた。いくら自分は甘いものが好きでなく執着がないからといって、お呼ばれの手土産をそれで済ませるか……。
と思ったのは私だけではなかったようで、同じメンバーでクリスマスパーティーをしようという話が出たとき、「けど、ケーキはちゃんとしたの買おうね」と誰かが先手を打っていた。
万人が共有する常識はない。けれども、年齢相応、立場相応の常識というものはある。
いい年をして自分ひとりいつまでも学生時代の付き合いのようなノリでいると、恥をかくこともある。

【あとがき】
万人に通用する「常識」はない。でも、あまりに自分のそれと違う人とは疎遠になっていくものですね(友人には似た感覚の人が多い…のは、だからなのかな)。