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2007年05月18日(金) 「よくあんなことしてたもんだなあ」と振り返ること

仲良しの同僚との飲み会の席で、「過去を振り返って、『よくまああんな大変なことをしていたものだ』とわれながら感心すること」というお題で盛り上がった。
ひとりは、独身の頃、同じ電車で通勤する恋人に毎朝手作りの弁当を渡していたことを挙げた。自分はみなと外に食べに行くので必要がなかったにもかかわらず、外食の多い彼のために作り続けていたという。
「栄養のバランスにも配色にも気を遣ってさ。早起きもべつに苦じゃなかった」
その彼と結婚した現在はというと、「おかずはだいたいゆうべの残りもんと冷凍食品をチン、かな。だって一分でも長く寝てたいもん!」だそうだ。
また別の女性は、「結婚して半年間、夫に素顔を見せなかったこと」だと言った。夫より必ず先に起きて顔を洗い、化粧を完了していたらしい。さすがに寝るときはファンデーションを塗るわけにはいかなかったが、眉だけはしっかり描いていたという。
あの恥じらいはどこへやら、今はもちろんスッピンがデフォルトだ。

「あんなこと、今はとてもできない」と振り返る事柄は私にもたくさんある。真っ先に思い浮かべたのは高校時代の部活だ。
毎朝五時に起きて弁当を作り、六時に家を出、七時から朝練。放課後はもちろん、土曜も日曜もバレーボールに明け暮れた。この私が三年間一人の好きな男の子も作らなかったことを思うと、いかにそれオンリーの生活だったかわかる。
中学のときは全員なにかのクラブに所属しなければならなかったが、高校に上がるとそんな決まりもなく、帰宅部の子も多かった。誰に強制されたわけでもないのに、どうしてあれほど頑張れたんだろうか……と不思議な気さえする。
純情だったんだろうな。つらかろうが苦しかろうが入部したからにはやり抜くのが当たり前、途中で辞めるなんて考えもしなかった。とにかくがむしゃらだった。
あの頃の頑張りを発揮してみろと言われても、もう無理だ。あのひたむきさは十代の頃限定のものだった。

そして、もうひとつ。これは比較的最近までしていたことについての「よくあんなことしてたなあ!」なのだが、それはこの日記のことである。
二〇〇〇年にサイトをオープンしてから昨年の暮れまでの六年間、私は判で押したような月・水・金更新を続けてきた。それを思うところあって今年から週二回にしたところ、その楽なこと、楽なこと……。週三回更新を当たり前に行っていたときはなんとも感じていなかったけれど、実はかなり大変なことだったのだ、と初めて気づいた。
私が一本のテキストを更新するまでの流れはこうである。書いたらその場でアップする人が多いと思うが、私は原稿を一晩寝かせ、翌朝推敲してアップすることにしている。
よって、週三回更新をしていた頃の一週間はこんなふうだった。

  月 …… 推敲ののち更新。次回なにを書くか考える。
  火 …… 日中にテキストの内容を固め、夜に下書き。
  水 …… 推敲ののち更新。次回なにを書くか考える。
  木 …… 日中にテキストの内容を固め、夜に下書き。
  金 …… 推敲ののち更新。次回なにを書くか考える。
  土 …… 日中にテキストの内容を固め、夜に下書き。
  日 …… 休み

「あら、私なんか毎日更新だわよ」と言うなかれ。うちはご覧の通りの長文である。かつ、私はものすごい遅筆なのだ。ストーリーをすっかり組み立ててからパソコンに向かうのだから、頭の中のものをアウトプットするだけのはずなのに、なぜかやたら時間がかかる。
夫が出張だらけの人だから自由に使える時間はふつうの既婚女性よりはたくさんあるとはいえ、私も仕事をしている身なので日付が変わる頃には布団に入らなくてはならない。六年もこのリズムで生活していると「こういうもん」という感じで、ああしんどいとか忙しくてたまらんとか思うことはなかったが、あらためて考えてみると、一週間のうち日記のことを完全に休めるのは日曜だけとは、一日おきの更新でも十分ハードだったのだなあと思う。
週二回更新に変更してからは一週間に三日もオフができた。最初は手持ち無沙汰さえ感じたものだが、半年も経っていないというのに今ではもうすっかりこのペースに体がなじんでしまった。
ネットしか娯楽のない無人島にでも送り込まれないかぎり、もう週三回は書けないと思う。


「推敲」の話をしたのでついでに書くと、私はその作業をとても大事にしている。
下書き原稿の仕上がり具合によって目覚ましをセットする時刻が決まる。当然、不出来なほど早起きになる。と言ったら、夜のうちに頑張って最後までやっちゃえばいいじゃないかと言われそうだが、時間を置いて読み返す、このことに意味があるのだ。
眠っている間に頭の中がリセットされ、起きたときには「はて、昨日はなに書いたっけな?」というくらいまで忘れている。そういう状態で読み直すと昨日は気づかなかった粗が見え、文章が明らかに整うのだ。
短い日記ならそこまでしなくてもいいと思うが、うちみたいな長文だとこの過程を省くわけにはいかない。しかしこれをやると後から「あー、しまった」と思うことを確実に減らせるから、おすすめである。

でも、「書き終えたらすぐにアップしないと気が済まない」という人も多いに違いない。
そんな場合は、原稿のフォントを変更してみよう。たとえばゴシック体で書いたものを明朝体で表示するとなんだか別物に見え、新鮮な気分で読み直すことができるから。「一晩寝かせる」に近い効果を期待できると思う。
勢いで書いてしまったほうがおもしろい文章というのもたしかにあるけれど、そういうタイプの日記書きでない場合はぜひお試しあれ。そのひと手間で文章がずいぶん変わります。

【あとがき】
パソコンをする時間がずいぶん減りましたね。書くための時間が減る以外に、1話分届くメールが少なくなるので返信に充てる時間も減るから。ま、それでも一般の人に比べたら十分多いんだけど。