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2006年12月13日(水) 正しいクリスマスの過ごし方

学生時代の友人から電話。
「来週の週末やけど、家にいる?泊まりに行ってもええかなあ……」
いつもはこちらの予定も聞かず「○日の夜、遊びに行くわ。よろしくー」なのに、今日はどうしちゃったの?と思いながら、来週末って何日だっけとカレンダーに目を走らせて……そうか、もうそんな季節なのね。
彼女は去年もこの時期に電話をかけてきた。暗〜い声で、「今年のクリスマスは曜日回りが最悪でさ、二十三・二十四・二十五の三日間とも会社休みやねん……」とつぶやき、イブイブにうちに避難してきたのである。

私の友人には独身で恋人なしというのがけっこういるのだが、みな「クリスマスは家にこもる」と口を揃える。うちのひとりは仕事さえ休み、マンションの部屋から一歩も出ないという。街に出ればジングルベルの歌が鳴り響き、サンタ服を着た店員に接客され、ケーキの箱を抱えた人とすれ違う。この巷の盛り上がりと自分のテンションの温度差が堪えるのだ。『グレムリン』の中に「一年で一番自殺者が多いのはクリスマスだ」というセリフがあったが、なるほどという感じである。
そして私自身、幸せそうなカップルを横目にミスタードーナツのひとり用クリスマスドーナツ「サンタでCHU」を買った年があるから、「恋人なし」「ひとり暮らし」「二十代後半以上」の三重苦のつらさはよおくわかる。どうぞどうぞ、うちを駆け込み寺にしてちょうだい。
「よかったあ!だってそんな日に家にひとりでおったら孤独死してしまうわ」
彼女にとって恋人のいない年の理想のクリスマスは、残業を終えて帰り支度をしているときに「あ、そういえば今日ってクリスマスだったのね」と気がつく……というものなので、会社が休みだと大変なのだ。
「でもね、今年を乗り切ればしばらくは平日クリスマスの年が続くんよ。だから来年からは迷惑かけないからさ」
いや、いや。友人としてはそんな気遣いをしてもらうより、来年こそいい人を見つけてもらいたいワ。

早速、出張先の夫に電話をかける。来週末はうちでクリスマスパーティーをするからねと言うと、え!となんだか慌てた様子。
「○○たちと金曜の夜から二泊で北海道でスキーしようって話が出てて、行こうかと思ってたんだけど……」
なぬう!クリスマスに家を空けようっていうの?思わず声を荒げる。
「そんな日に泊まりがけで遊びに行く夫がどこにいますか。そんなの、『僕は浮気してます。どうぞ疑ってください』って言ってるようなもんよ。スキーは来年も毎週のように行くんでしょう、ならクリスマスくらい家にいてちょうだいっ」
夫のよくないところは、自分にとってそうであれば妻にとってもそうであると思い込んでしまうところ。あなたにとっては単なる土日でしかなくても、私にとっては違うのよ。
ということで、今年も友人と一緒にケーキを作り、(夫込みで)鍋をつつき、夜を徹して話し込む楽しいクリスマスになりそうだ。

とまあ、恋人のいない年のクリスマスの切なさを書いてみたが、じゃあ私が何度か経験したそれが涙なしでは語れないような思い出ばかりだったかというと、そうでもない。
会社に入って二年目か三年目だったと思う。仲良しの同僚たちも揃って恋人なしだったので、イブに私の部屋でパーティーをすることになった。
当時、デパ地下に出店している食品メーカーの営業部にいた私たち。ふだんは本社勤務だが、一年で一番の書き入れ時であるクリスマスには店舗に駆り出された。閉店後、売れ残った惣菜を山のように抱えて帰ると、合鍵で先に家に入っていた同僚が部屋の飾りつけを済ませてくれていた。
私以外のメンバーも応援販売に行った店の店長に売れ残りを持たされていたので、合わせるとものすごい量だ。残り物といってもローストビーフだチキンキエフだオマール海老のグラタンだとクリスマスメニューばかりだから、とても豪勢。あれはおいしかった。
マライア・キャリーの「メリー・クリスマス」に乗せてプレゼント交換もしたっけ。上限は二千円、私はなににしようかさんざん迷った末、「来年は私たちなんかじゃなく素敵な彼と過ごしてね」という気持ちを込めて、“勝負パンティ”を購入。
そうしたら数日後、私のプレゼントが当たった同僚から、
「あれ、家に持って帰ったらお母さんに『そんないやらしいパンツ、捨ててしまいなさい!』って怒られた」
と言われてしまった。失礼ね、セクシーと言ってもらいたいもんだわとぷんぷんして、もう少しで「じゃあ私が使うから返して」と言いそうになった。

* * * * *

ところで、世の夫婦はクリスマスをどんなふうに過ごすのだろうか。
恋人時代にはちょっといいレストランでディナーを食べたりライトアップを見に行ったりと派手なことをしていたカップルも、結婚したら「どこも人でいっぱいだし、チキンでも買ってきて家で食べようよ」となるのではないか。
……と思っていたら、うちは毎年プレゼント交換をするよという男性がいて驚いた。子どもに気づかれずにサンタのプレゼントを手配するのはむずかしくないだろうが、妻をサプライズさせるプレゼントを用意するのは至難の業ではないだろうか。喜びそうなものをリストアップしておき、百貨店やなんかが開いている時間に仕事を終わらせ、買いに行かなくてはならないのだから。非マメで多忙なうちの夫にはぜったい無理だな。

結婚記念日や互いの誕生日、クリスマスといった日にはりきるのはたいてい女性であるが、面倒がらずそれに付き合ってくれる男性はいい。
私は「レストランは僕が予約しておくね」とか「プレゼントはなにがいい?」といった言葉を夫の口から聞いてみたいなんて大それた望みは持たないけれど、「今日はなるべく早く家に帰ろう」と考える程度にはそれらの日を大切にしてくれる人であってくれたらなあとは思う。
クリスマスに妻を置いてスキー旅行に出かけようだなんていうのは……論外ですッ。