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2006年12月04日(月) 婦人科検診を受けてきた

「早いとこやっちゃわないとなあ……」と思いながらもどうにも気が進まず、先送りにしてしまっていることは誰にもひとつやふたつあるだろう。先日私はようやく決心して、それを片付けてきた。
なにかというと、乳がん、子宮がんの検診である。
年に一度会社が受けさせてくれる健康診断は本当に基本的な項目だけで、婦人科検診なんてものはない。なので、数年前から「三十過ぎたし、受けに行ったほうがいいよなあ」と思っていたのだ。
けれども、私は産婦人科というところに足を踏み入れたことがない。それに加え、どんな検査が待っているのかと思ったら腰が引けてしまい、今日に至っていたのである。

しかし、このあいだ年上の友人にその話をしたら、「あかんやん、ちゃんと行っとかんと」と叱られてしまった。あら、てっきり「私も、私も」と言われると思っていたのに。
「……なあんてね。私も小町ちゃんの年の頃は行ってなかったから、えらそうには言えんねんけど」
彼女も長いこと私と同じ気の重さで婦人科検診を避けてきたのだが、何年か前に子宮頸がんで子宮を摘出したタレントの向井亜紀さんが「女性は三十過ぎたら受診して」と呼びかけているのを見て、一念発起したのだそうだ。彼女はここまで異常なしできているが、知り合いにはたまたま受けた検診で子宮の病気が見つかったという人もいるらしい。
「とくに乳がんが怖いなあと思ってて。私なんか四十過ぎてて未婚で出産経験なくて酒飲み……って危険因子山盛りやから、用心しとかなな」
実は私も、ピンクリボンキャンペーンでYahoo!JAPANのページがピンク色に変わる時期はいつもどきどきするのだ。日本人女性の三十人に一人がかかるといったら、クラスに一人以上の確率である。まったく他人事ではない。
「市町村が実施してる検診は何百円とかで受けられるはずやで」
ということで、私は今月「誕生月検診」を受ける決意を固めたのである。

しかし、行くと決めたところで恥ずかしいものは恥ずかしい。調べてみたら、週に一度女性の先生が担当になる日がある病院を見つけた。よし、ここにしよう!
……と思ったのだが。それは平日なので、仕事を半休しなくてはならない。
「そこまでして女医さんにこだわるのって馬鹿げてるかなあ……。いや、でもやっぱり男の先生はちょっとなあ……。ああ、どうしたものか」
頭を抱えていたら、「べつにどっちでもいいじゃん」とのんきな夫。思わず声が荒くなる。
「あのねえ、私は歯科検診に行くわけじゃないの。婦人科なの、婦人科。“あの台”に乗らなきゃならないの!」
そうしたら、「あの台ってなに?」と返ってきてがっくり。
「……もういい」
私はそれを伝えるのを断念した。


結局、週末に自宅近くのレディースクリニックに行くことにした。確認の電話を入れた際に注意事項があるか訊いたところ、「スカートでお越しになったほうがよろしいかと」と言われて怖気づいたが、じたばたしてもしかたがない。
で、当日。かなり混むと聞いたので会社に行くよりも早い時間に家を出たのだが、八時半に着いたらすでに開院を待つ人の列ができている。最後尾は若いカップル。その後ろに並ぼうとしたら、男性が大慌てで立ち上がり、私のために丸イスを空けた。そうか、これが産婦人科なんだなあ。
男性はドアが開いても中には入らなかった。「じゃあここにいるから」と彼女に言っている。
ふうん、こういうとき夫は付き添わないものなのかしら?と思ったが、病院ならともかく小さなクリニックの待合室というのは男性にとってはかなり空気の薄い場所なのかもしれない。

さて、検査はどんなだったかというと。
あれほど憂鬱だった乳がん検診であるが、拍子抜けするくらいどうということもなかった。少し前に会社の健康診断で聴診器をあてられたとき、胸元を全開にしているわけでもないのにその男の先生は首を九十度曲げ、ずっと横の壁を見ていた。女性相手だと余分な気を遣わなくちゃいけなくて大変だなあと気の毒になったくらいだが、乳がんの検査をする先生はもちろんそんなふうに目をそらしているわけはない。ベッドに横になった状態で視診、触診を受けたわけだが、「自己チェックするときはこうすればいいのか」と思いながらだったためか、覚悟していたような恥ずかしさは感じずに済んだ。

しかしながら、子宮がん検診のほうは想像していた通りであった。検査自体はあっという間なのだが、あの台……そう、内診台に腰掛けるのにやはり少々勇気がいった。
「下に履いているものを脱いで座ってください」と言われ、友人は靴下まで脱いでしまったらしい。靴下は関係ないやろ!と大笑いしたが、まあ、初めてのときは緊張のあまりそういう失敗もしてしまうかもしれない。
内診台をご存知ない方のために説明すると、見た目はマッサージチェア。違うのは、ふくらはぎを乗せる部分がついていることと、カーテンが吊るされていて座るとおなかから下は見えなくなること。それが電動で後ろに倒れ、同時に診察しやすいよう両足も広げられるようになっている……。
こればかりは「いっぺん経験したから次からはもう平気」とはいかなさそうだ。

* * * * *

身支度をして診察室に戻り、乳がん検診の結果を聞く。異常なしとのことで胸をなでおろす。子宮がん検診のほうは後日の通知であるが、それでもすっかり気分が軽くなった感じ。婦人科検診は数年来の宿題だったものなあ。
これを読んでいる女性の中にも二の足を踏んでしまっている方が少なくないと思うけれど、どちらの検診もそれぞれ五分か十分くらいのもの。痛みもないし、安心を得るためなら耐えられる程度の恥ずかしさだよ。勇気を出して受けに行きましょう!(私はこれからは毎年受けます)