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2006年03月20日(月) 草食オトコ。肉食オトコ。

畑正憲さんのエッセイを読みながら、思わずへええとつぶやいた。
「肉食動物と草食動物は「目」の位置で見分けられる」
とムツゴロウさん。ふたつの目が顔の正面についているものは肉食動物、側面についているものは草食動物であるという。してその理由は?
正面に目がある肉食動物は両目でものを見るため遠近感を掴むのが得意、よって獲物との距離を瞬時に把握できる。一方、獲物の立場である草食動物は目が横についているため視界が広く、外敵の姿をキャッチしやすいというわけだ。
私はライオンとサイ、猫と馬の顔を比べ、すっかり感心してしまった。生物の体は自然の産物のはずなのに、こんなにもうまくできていたのである。


話が飛ぶようだが、先日実家に帰省したら近くに住む妹が遊びに来た。彼女の夫が最近部署を変わったと聞いていたのでその後どう?と尋ねたら、帰りがぐっと遅くなったらしい。
「じゃあまたニキビ作っちゃってんの?」
「そうやね〜ん」

義弟は学生時代ずっと体操部に所属していたスポーツマンなのであるが、体質的には少々デリケートなところがあるようで、疲れがたまると顔にニキビが噴き出すのだ。風邪を引くとたちまち一、二キロ体重が落ち、古いものを食べるとおなかを下す。夜六時以降にコーヒーを飲むと眠れなくなり、花粉症の時期には目が腫れあがる。
熱を出しても食欲は落ちず、何を食べてもおなかはへっちゃらな私とは大違いである。

さて、その話を自宅に戻って夫にしたところ、「○○君って、草食動物って感じだよね」。その何気ない言葉に私は膝を打った。
義弟は落ちついたトーンで淡々と話す。はめをはずすほど大はしゃぎをしたり、ごみ箱を蹴飛ばして怒ったりする姿はちょっと想像できない。ギラギラガツガツしておらず、穏やかで優しげな印象。
「草食」という言葉はそんな彼の雰囲気を実にうまく表現していると思った。

とすれば、肉食動物な男性とはどんなであろうか。
自己主張が強く、アグレッシブ。行動的で目立つのが嫌いではないタイプ。有名人でぱっと思い浮かぶところでは村上龍さんは肉食性で、村上春樹さんは草食性。
そして振り返れば、私が付き合ってきた男性は見事に肉食性の人ばかり(村上龍さんはまったくだめだが)。惹かれるのはいつも、華やかで上昇志向の強いリーダータイプの人だった。

とはいえ、この頃は「ちょっと嗜好が変わってきたのかな?」と思うところもあるのだけれど。最近いいなと思うのは草食性の男性であることが多い。
エネルギーがあり余っていた頃は個性の強い味がおいしく感じられたが、いまの私には少々重たい。年をとって刺激よりも安らぎを求めるようになったのかもしれない。

ちなみに、私の夫は十人いたら十人が「すごく優しそう」と言うくらい外見は柔和で草食っぽい。しかし、中身は肉食性よりさらに生命力の強い雑食性だと思う。
私が知る肉食気質の男性たちはそれぞれどこかしらもろいところを持っていた。付き合っていくうちに実は見た目ほどは強くないのだということがわかった。
けれども夫は私が出会った中でただひとり、「この人は、たくましい」と思う男性である。順応性が抜群で、器用でしたたかなのだ。どんなものでも餌にするので、特定の植物や動物しか食べられない草食動物、肉食動物より生き延びられそうな感じ。

* * * * *

では私は……?
男性では草食と肉食の割合は半々か六対四くらいではないかと思うが、女性となると草食が圧倒的に多い気がする。友人知人の中に「この人、肉食やなあ」という女性はほとんど思い浮かばない。
そして、もちろん私も草食である。気性は穏やかでおっとり、きっとみなさんも私について「牧場でゆったりと草を食んでいる羊」をイメージしてくださっているのではないだろうか。

……すみません。いま図々しいこと言いました。
ええ、ええ、私もたぶん雑食性でございます。