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2005年10月05日(水) あなたはシングル?それともダブル?

週末、家に遊びに来た友人がトイレから戻ってくるなり言った。
「小町ちゃんとこって、シングルなんだ」
なんのことかと思ったら、トイレットペーパーの話。まるでなにかめずらしい発見をしたかのような口ぶりだったので、それがどうしたんだろうと思っていると、「私はダブル派なんだよね」と彼女。
それを聞いて思わず、
「へえ、リッチやなー。私、ダブルなんて買ったことないわ」
と言ったら、なにがリッチ?と不思議そうな顔をされてしまった。

ホテルやレストランでトイレを借りるとダブルのことがある。しかし、私はシングルひと筋三十余年、ペーパーを取り出すときの一連の動きがすっかり癖になっているものだから、ついいつもと同じように景気よくペーパーを引っ張り出してしまうのだ。そして切り取ったあと、妙に厚ぼったいことに気づいて、「……あ。長さ半分でよかったんだ」となる。
こんな私が自宅でダブルを使ったりしたら、またたく間に十二ロールを消費してしまうに違いない。だからダブルなんて絵柄付きと同じくらい贅沢な気がして、ちょっと買えない。

しかし、彼女は正反対のことを言う。実家にいた頃からずっとダブルできたため、職場のトイレなどでシングルを使うときは最中に破れてしまうのではないかという恐怖感から、やたらとカラカラいわせてしまうのだそうだ。だからダブルしか買わない、と。
「それに、シングルの紙ってゴワゴワしてない?ときどき、手で揉んでからでないと使えないくらい硬いのもあるよね」
「ごめんなー、うちの肌触り悪くてー!」(揉み込まねばならないほどではないと思うが)

たしかにダブルはフワフワしていて、いかにもオシリに優しそうだ。実際、痔主になった友人からダブルに変えたという話を聞いたこともある。
……と納得していたら、
「でも、本当はうちのマンション、ダブルは使っちゃいけないんだけどね」
と彼女が言う。
どういう意味かと思ったら、入居のときに大家さんに「パイプが詰まると困るから」という理由で言い渡されたのが、「お風呂で塩の使用は禁止」と「トイレットペーパーはシングルを使用」だったという。
えーっ、前者については温泉に行くと「塩マッサージはご遠慮ください」と張り紙に書いてあるのをよく見かけるからフンフンという感じだけれど、ペーパーのダブルもだめだなんて!
しかしさらに驚いたのは、彼女が過去に本当に詰まらせたことがあるというからだ。そのとき、修理屋さんが「ダブルは詰まりやすいんですよ」と言っていたそうである。……びっくり。

彼女によると、「関東はダブル、関西はシングルが圧倒的によく売れるってテレビでやってた」とのことだが、それは「肉じゃがは関東は豚、関西は牛で作る」と同程度には信憑性のあるデータなんだろうか。


個室の中の営みというのは、人によって「常識」がずいぶん違っている。
別の友人が結婚したばかりの頃、夫が便座を上げっぱなしにするのが我慢ならず、「使ったらちゃんと下ろしといてよ!」と文句を言ったら、「オマエが下げっぱなしにしてるんだろう!」と言い返されたそうだ。
その話を聞いて私は目から鱗が落ちる思いがしたが、そんな“事件”でもないかぎり、人は自分のやり方が正しい、ノーマルであると信じて疑わずに一生を終える。そのことは「和式トイレのレバー問題」について書いたときに証明済みである。

「シングルか、ダブルか」を論じたあと、私たちは、
「ペーパーはていねいにたたんで使うか、くしゃくしゃと丸めて使うか」
「ペーパーの切り取り線は要か、不要か」
「洋式を使ったあと便器のふたは開けたままか、閉めるか」
でかなり盛りあがったのだけれど、紙面が尽きたのでまたの機会に。