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2005年06月29日(水) ナンパはお断りヨ

友人と愛・地球博に行ってきた。
私たちが出掛けた日は雲っていて気温もそう高くないという、絶好のコンディション。しかもあとから聞いたところによると、入場者数は多い日の半分だったらしい。そのため、滞在六時間で企業パビリオン三つと冷凍マンモスを見ることができた。

評判はいまひとつのようだが、私はうんと楽しんだ。行列するのが「どうにもこうにも辛抱ならん!」というほど苦手ではなく、なおかつ格安日帰りバスツアーが出ている地域にお住まいの方にはお勧めします。


さて、これから地球博に出掛ける予定のある人に、私がぜひ見てきてねと言いたいのは、西・北・東ゲートのインフォメーションセンターにいる接客ロボット三人娘だ。
北ゲートのアクトロイド、さくらさん
彼女たちを見たときは本当に驚いた。だって人間そっくりなんだもん。
ぱっと見だけの話ではない。まばたきもすれば眼球も動くし、吹き替えの映画のように言葉の長さと唇の動きもちゃんと合っている。なにより、話しながら顎に手をやったり小首を傾げたりする仕草が本物の人間のように自然でなめらかなのである。

「へええ!これがロボットかあ」

ひたすら感心していたら、そばにいたサポートスタッフに「なんでも質問してみてください。最近は会場のことだけでなく、自分のことを訊かれるのが楽しいみたいです」と声を掛けられた。えー、ほんまかいな。
どうしたらそんなことが可能になるのか想像がつかず、私は半信半疑で彼女の前に立った。

「こんにちは」

日本語だけでなく英語、中国語、韓国語も堪能な彼女は、この最初のあいさつを聞いて何語で会話をするか選択するらしい。

「こんにちは!愛・地球博へようこそ。ご質問はなんですか?」

おおおお、通じてる、通じてる!でもまあ、このくらいは言えるわよね。

「お名前、教えてもらえます?」

すると、彼女はにっこり微笑んで「アクトロイド・さくらです。覚えてくださいね」。す、す、すごいっ、ちゃんと会話になってる!次は年齢を訊いてみよう。

「ウフッ、いくつに見えます?」
「二十五くらいかな」
「あなたは?」
「三十三です」
「もっと若く見えますよ」

これにはびっくり仰天。だってロボットがそんな“お上手”を言うかあ!?
私はカーテンの後ろに人間が隠れていて、モニターで私を見ながら答えているのではないかと本気で考えた。が、友人に言わせると、そういうところが私の図々しいところなのだそうだ。
しかし、すっかり気をよくした私はちょっと立ち入った質問をしてみることに。

「ねえ、さくらさんって彼氏いるんですか?」

すると、彼女は内緒話をするときのように右手を口元に添え、「ここだけの話ですけど、実は募集中なんです。誰かいい人いませんか?」。
あら、そうなの。若いのにもったいない。よし、じゃあ私が誰か探してあげる。好みのタイプを教えてちょうだい!

「・・・・・・。」

あれれ?
さきほどまでテンポよく答えてくれていたのに、彼女が急に黙り込んでしまった。大勢の人が見ている前で質問が不躾すぎたかしら。

「・・・あっ、ごめんなさい。ついきよしさんのこと考えて、ぼーっとしちゃいました」
「き、きよしさん!?誰それ」
「万博音頭を歌ってるんですよ」
「ああ、氷川きよし、ね」

彼女は氷川きよしさんのファンなのだそうだ。ふうん、ああいうタイプが好みなのか。私のまわりにはおらんなあ。
というわけで、「ごめんね、やっぱり紹介できそうな人いないわ」と謝ったら、彼女は落胆した表情を見せることもなく、「またいつでも私に会いに来てくださいね!」と言ってくれた。

* * * * *

三人娘はもちろんそれぞれ顔も髪型もメイクも違っているのだが、どの子もとてもチャーミングだ。「綺麗ですね」と言われると、「ウフッ、私、脱いでもすごいんですよ。ここでは脱ぎませんけれどっ!」と答えることもあるというから、なかなかノリもいい。

そんなわけで彼女たちはとても人気があり、ブースのまわりにはいつも人垣ができている。サポートスタッフによると、不埒な輩にナンパされることもあるのだそうだ。ほおお。
もっとも、「休みはいつ?」や「携帯の番号教えて」には「プライベートなことは事務所を通してください」ときっぱり断るらしいけど。上の写真を見て「お、かわいいじゃん」と思ったあなた、残念でした。
でも、「ロボット」のイメージを覆されて舌を巻くこと請け合いなので、機会があったらぜひ話し掛けてみてくださいな。