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2005年02月28日(月) 読むべきか。読まざるべきか。

ときどき読み手の方から真っ向から対立する意見が届くことがある。
といっても、私が書いたことに対して「真っ向」なのではない。Aさんから届いたメールとBさんから届いたメールが正反対の主張である場合がある、という意味だ。

私のメールボックスの中で、AさんとBさんが一騎打ちの態勢になっている。
双方の言い分に一理ある、あるいは心情的に理解できる部分があるとき、審判であるところの私はどちらかに軍配を上げることができず、モニターの前で身悶えする。
そしてその対立の構図が「男vs女」だった場合、話はさらに面白くなる。

* * * * *

私は前々回の「女の不用意」に、男と女が初めて深い関係になるタイミングについての渡辺淳一さんの説、「女性にもその気がなかったわけではないのに、なにか間が悪くそうなれなかった場合、たいていの男は二度は挑まない」にはそうだろうかと首をひねる、と書いた。
私には「二度目」が訪れなかったことはなくピンとこなかったからであるが、その部分についてA子さんからこんなメールが届いた。

「なんちゅう小心者の男やと思うのは私だけ?本気なら、一度や二度断られたってアタックすべき。そのくらいでくじけんといて!と思ってしまう」

同様のコメントはほかの女性からもちょうだいしている。私はそれらを「だよねえ、ったく意気地がないったら・・・」と相槌を打ちながら読んだ。
とそこへ、B男さんからメールが。

「二度目は行きにくいんですよ、やはり。厚顔無恥に何度も行く男というレッテルはいただきたくない。女性の気持ちに敏感な男ほど、それを断りの言葉と解釈してしまう傾向があると思います。それにしても女の人って勝手だよねえ、一方では断りと察してくれない男に『鈍い』と烙印を押し、一方では二度目を誘えないのは疑問って言うんだから(笑)」

アイタタタ・・・!
あまりに鋭い突っ込みに思わず片腹を押さえる私。ときどき読み手の方の凄まじい記憶力に驚愕することがあるが、この方もまた一年以上も前に私が書いた文章を覚えておられたのだ。
そう、私は以前、「鈍い男」というテキストを書いた。内容はタイトルそのまま、
「女性をデートに誘い、いつが空いているかと訊いても彼女が『今月はずっと忙しいの』と言うだけで代わりの日程を提案してこない場合、それはその気がないとみるべきなのだ。私の目には明らかに脈がない、あるいはとうに振られているのにいつまでも気づかないというケースも少なくない。男性はどうしてそんなに鈍いんだ」
というものである(詳しくはこちら)。

いまもこの考えに変わりはない。とはいうものの、「女の人って勝手だよねえ」には弁解の余地がない。
ある場面では「言葉の裏を読んでくれない(いい加減に気づいてよ・・・)」とため息をつき、別の場面では「言葉を額面通りに受け取って(勘ぐっちゃイヤ!)」と言う。これでは男性に「どないせえっちゅうねん!」と文句を言われてもしかたがない。
私の中では、裏を読む必要のある場合とない場合は依然として存在する。しかし、それを「状況によって判断してちょうだいね」と男性に注文するのが無理な相談であることは百も承知だ。
私はすまなさのあまり頭を垂れた。


前回の「男の不用意」に、「男性は女性のように、自分をよく見せようとせんがために妙なところで見栄を張ったりかっこつけたりすることはないのだろうか」と書いたところ、こんなメールをいただいた。
彼女と初めてのベッドイン。しかし緊張のせいか、肝心のモノが言うことを聞いてくれない。なにをどうがんばってもだめ。ついにあきらめた彼は彼女に向かって言ったそうな。
「君を大事にしたいから、今日はやめておこう」

この話で思い出したのは、十年以上も昔の学生時代のこと。
飲みすぎか、緊張か、後ろめたさか。やはり彼がなかなか臨戦態勢にならない。そうは見せまいとすればするほど、焦りがこちらに伝わってくる。
初めてだから首尾よくスマートに進めたかっただろうな、この人のことだからいいところを見せようと思っていただろうなと思ったら、私の口から思わず出た。
「やっぱり今日は・・・ごめんなさい」


「大事にしたいから」と言われた女性は“真相”に気づいていたのだろうか。私の場合は別れて何年もたってから判明した。

「あのとき俺、むちゃむちゃ焦っててん。初めてやのにかっこ悪すぎやん。ほんまどないしよかと思ったで」
「そうやったん」
「気づいてたんやろ?」

そう言って、彼は豪快に笑った。
真相がそこにあるから、言葉の裏を読むべき場面。真相がそこにあるから、読まなくていい場面。
この見極めは本当にむずかしい。男の人には・・・いや、私にだってとても無理だ。

※ 参照過去ログ 2003年11月10日付 「鈍い男」