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2004年07月20日(火) 「コンプレックス」が厄介な理由(前編)

新聞で、中学三年生の男の子のこんな悩み相談を読んだ。

ずっと好きだった同級生に思いきって告白したら、「性格は好きだけど、私より背が低い人はちょっと・・・」と断られ、すごいショックを受けました。僕は背が低いのがコンプレックスです。女の子って背の高い男じゃないとだめなんでしょうか。


これに対する読者の意見もいくつか載っていた。
「背が高くてうらやましいとよく言われますが、服を選ぶのに苦労しています」
「芸能人でも背が低くて人気のある人はたくさんいるじゃないですか。気にしなくてよいと思います」
ひとつを除いたすべてが「背が高いからといって……」という内容だった。が、すべて読み終え、私は思った。
「はたしてこれらは相談者の男の子の心に届くだろうか」
服や靴のサイズがなく、長身であることのメリットをそう実感できずにいるのは本当だろう。身長の高低と内面の魅力の有無には関係がないというのも正論だ。しかし、自分が相談者だったら、そう言われて「うん、そうだよな」と納得するかしら。
「僕は身長百八十センチですが、メリットといえば満員電車で息苦しい思いをせずにすむことくらいです」と言われても、おそらく鼻白むだけだろう。「背が高いとたしかに包容力がありそうに見えますが、それだけで判断はしません」と女性に言われても、“キレイゴト”という五文字が頭をよぎるのではないか。
そんな中、ひとりだけ「なんだかんだ言っても、女性は背の高い男性が好きなのです。あきらめないで努力してみてください」と書いている女性がいた。彼女の夫は背が低いが、息子はぜったいに背を高くしてやりたいと思い、味噌汁は必ず煮干しでダシをとり、勉強よりもとにかくよく眠らせた。その甲斐あってか、中学までは小さかったのに百八十センチまで伸びたそうだ。
現実的かどうかはともかく、私にはこのアドバイスが一番本音、言い換えれば“回答者にとっての真実”が伝わってくるもののように思った。
それにしても、こんなふうに背が低いことを気に病んでいると他人に明かすことができるのもこのくらいの年齢までだろうなという気がする。コンプレックスが心に根を下ろしてしまったら、いよいよ口にすることもできなくなるものだ。(後編につづく)

【あとがき】
女性の長身もコンプレックスになりうる要素ですね。以前、松嶋菜々子さん(公称172センチ)が雑誌のインタビューで、「子どもの頃から背が高いのがコンプレックスで、猫背で歩く癖がついてしまいました」と語っていましたが、へええ、こんなきれいな人でもそんなことを思うのかと驚きました。ちなみに私は身長が167センチあります(えー、イメージじゃないーと思った人、どんな風に想像していたかを添えてメールで申告するように)。女性に「背が高くていいね」とお愛想を言われると、「小さいほうがかわいいよ」と返すし、それは嘘ではないのだけれど、じゃあもっと低いほうがよかったのかというとそうではなくて。一番のメリットは「着る服を選ばない」ということでしょうか。それを上回るデメリットというのが浮かばない。まあ、私より背の低い男性には好かれないというのはあるかもしれないけれど……あ、そうか、それが最大のデメリットだったのか!