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2004年05月12日(水) その可能性をきっぱり否定できる女性はどのくらいいるのだろうか

ゴールデンウィーク前に、「歯が痛いヨー!」と大騒ぎしたことを覚えておいでだろうか。突然降って湧いた痛みにびっくりして、近所の歯科医院に飛び込んだときの話だ。
受付で初診であることを伝えると、問診票を渡された。「アレルギー体質ですか?」「大きな病気をしたことはありますか?」といった質問が並んだあれだ。過去、この中に私が「はい」と答えなくてはならない項目が用意されていたことはない。私はためらうことなく、次々と「いいえ」に丸をつけていった。
が、今回はひとつだけ、円を描ききってから「ちょっと待てよ」と読み直した質問があった。
「あなたは現在、妊娠していますか?」
既婚、未婚にかかわらず性生活のある女性で、こう尋ねられて「いいえ、していません」と確信を持って答えられる人はいったいどのくらいいるのだろう。
基礎体温をつけていない女性が自分が「妊娠中でない」ことを確認できるのは月に一度だ。質問されるタイミングによって、自分でもどうなのかわからないということも十分ありうる。
しかし、レントゲンや麻酔、処方される薬のことを考えたら、「たぶんないと思うけど……」で「いいえ」と答えるのはためらわれる。しばらく悩んでから、私はその隣りに「なんとも言えない」という選択肢を付け加えた。
受付の女性は言った。
「では、妊娠のご予定はありますか?」
問いのベクトルが「今日」ではなく「明日」に変わったわけだが、難易度はちっとも下がっていない。
「あるといえばあるし、ないといえばないし……。うーん」
私はふたたび頭を抱えた。問診票を前にうんうんうなっている女性など見たことがない。私が厳密に答えようとしすぎなのだろうか。
そうかもしれない。というのも、私はちょうどその直前に、妊娠が判明したばかりの職場の同僚からこんな話を聞いていたのだ。
思いがけない妊娠に彼女はうろたえた。二日前に「おかしい」と気づくまで、タバコもお酒もガンガンやっていたからである。
先生には影響はないだろうと言ってもらえたものの、かなり渋い顔をされてしまったらしい。
「だって知らんかってんもん」と彼女は口をとがらせるが、たしかにそうだよなあと思う。「そろそろ」とも思っていない人間が “不測の事態”に備えた生活をしているわけがない。
私にしたって、週三回、スポーツジムで飛んだり跳ねたり折れたり曲がったり、かなり激しい運動をしている。そういうのは妊娠がわかってから中断すれば問題ないのだろうか。

こんな話を書いたからといって、勘ぐりは無用だ。去年の後半、私があまりに精力的にオフ会活動に励んでいたため、「いよいよ子どもをつくる気になりましたか」というメールが届いたことがあるが、私はそれを読んで膝を打った。
「あ、ほんまや。その前には会いたい人は総ナメしとかなくっちゃ!」
私はまだ、あの人にもこの人にも、会っていない。
……あれれ?今日書いた話は前置きとして五行で終わらせ、べつの展開にするつもりだったんだけどな。紙面が尽きたので、次回にしよう。

【あとがき】
レントゲンや麻酔、処方される薬がどの程度の深刻さで「妊娠中は避けるべき」とされているのか、私は知識がありませんが、だからなおさら不安に感じる部分はあります。こないだの痛みは壮絶だったんですよ、日記にもさんざん書いたけど。で、歯医者の予約まで我慢できなくて、とりあえず家にあった古い鎮痛剤(五年前に親知らずを抜いたときに出された)を飲んで切り抜けようと思い、念のため歯医者さんをしている友人に「飲んでも大丈夫かしら?」と尋ねたんですね。そうしたら「その薬なら、小町さんが妊婦さんでなければ問題ないよ」と返ってきました。やっぱりそうなのね。本文に書いたのとはまた別の友人が妊娠に気づかず頭痛薬を飲んでいて、産む瞬間まで「もし薬の影響があったらどうしよう」と心配していたんですよね。可能性がないわけでないなら、私は「いいえ」と答えることはできないなあ。