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2003年05月29日(木) ONLY ONE

残念なことがあった。夏休みに北欧に出かける予定なのだが、最終地をロンドンにしていた。しかし、先日夫の会社でSARS対策の渡航自粛通達が出され、その指定国・都市の中にロンドンが入っていたのだ。おかげで、あちらで仲良しの日記書きさんにお目にかかる計画がおじゃんになってしまったではないか。
帰りはパリからの便に変更したと夫が言うのを聞いて、間髪入れず「パリかあ。知り合いいないなあ……」とつぶやいた私はどうかしている。でも、楽しみにしていたので、とてもがっかりしてしまった。
非日常を楽しむのが旅の醍醐味。わかっちゃいるけど、私の日常であるところの日記の世界もちょっぴりは持っていこう。
というわけで、今回も「ラブレター・フロム・北欧」をやるつもり。ここで募集をかけたら、ぜひリクエストしてね。

メッセンジャーは夜更かしの友。オンラインにしているといろいろな方に声をかけてもらえるのだけれど、どんな話で盛りあがるかというと、やはり日記の読み書きに関する話題である。
うちのサイトにリンク集なるものがないからだろうか。「誰の日記を読んでますか」と尋ねられることがとても多い。
マイ日記才人とブラウザのお気に入りに登録してあるサイトを合わせれば七十くらいはあるはずだが、「おすすめの日記は?」と言われてもとっさには選べない。
それに、私は自分のブックマークを他人に教えるのをとても照れくさく感じるタチ。部屋に遊びに来た友人に本棚を覗かれ、「ふうん、こういうのが趣味なんだ」とつぶやかれるのと同種のはずかしさがある。よって、手堅く無難なメジャーどころをいくつか紹介するに留まるのが常である。
さて、こういう話をしていると気がつくのが、「特別な思い入れのある日記」を持っている人が少なくないということだ。
それは自分がこの世界に引き込まれるきっかけになった日記であったり、同じ書き手として目標や憧れの位置にある日記であったりするのだが、「とっておき」という点で他の行きつけのところと一緒くたにすることができないという存在。そこに書かれてあった出来事をまるで自分の身に起こったことのように話したり、「とにかくきれいな文章を書く人なんですよ」と惚気たり、閉鎖になってしまったと肩を落としたり。そのさまはまるで恋する者のそれである。この場合の“恋の相手”が同性であるか異性であるかは関係ないのは言うまでもない。
「そういう日記に出会えてよかったね。それは本当に幸せなことだよ」
そう声をかけながら、こちらの胸まで温かいもので満たされる。
私たちが一生のうちに出会う人の数は約二万人と言われている。その中で配偶者になる可能性のある人は五人なのだそうだ。
そして、私は運命の日記に出会える確率もそのくらいのものなのではないかと思っている。
「神様、ありがとう」とつぶやかずにいられないような、星の数ほどある日記の中からよくぞ見つけだしたと自分を褒めてやりたくなるような、そんな日記に、そんな書き手にめぐり会えるのは。

人は必ず誰かに
愛されてると言えるよ
だって僕は今でも君を
とてもとても好きだから

人は必ず誰かに
愛されてると思いたい
君のこと想うように
僕もいつか愛されたい

(ズル休み/槇原敬之)


私の書くものがどこかの誰かにとって代わりのきかない存在であるなんてことは望むべくもないけれど。なんとなく口ずさみたくて……。

【あとがき】
「運命の日記」とまではいかなくても、好きな日記書きさんのサイトの掲示板やオフレポを読んで、他の人と仲良くしているのにちょっとヤケた……みたいな話はよく聞きますよね。その気持ちはなんとなくわかります。たとえ遠い存在だとわかっていても、ほのかな独占欲って芽生えちゃうもんなんですよね。私にもONLY ONEがあります。