オリビエの日記

2005年04月01日(金)    『スマスマ』特別編 ��

    村人は現金収入を得るために都会に出ていく。
   貧しさがもたらすのは借金、蒸発、病気、それが次々と孤児を生み出していった。
   両親を失った子、働き手の父親を失った子、この村にはまだ保護を求める子が15人以上もいるという。
   
    「すごくいい雰囲気っていうのもあるけれど、一方には厳しい現実もあるっていうのがあって、それをどう思う?」
   スタッフが感想を聞いた。
   剛君の心はどこか遠くを見つめているようだった。
   「なかなか言葉にならないっていうか、見たままが全てなんで」
   間をおいて、ゆっくりと言った。
   「ゆっくり考えて感じたことを皆さんに伝えようかなと思っています」
   たやすく村の人たちを論じたりすることが出来ないという剛君の表情が美しい。
   
    ピーターは村に着いたら思い出話をしてくれると言っていた。
   でも、その約束は果たせなかった。
   なぜならピーターの小さな心は壊れかけてしまったから。

    剛君は寮母のタッサニーさんと、少年ピーターとの待ち合わせ場所に向かった。
   遠くにピーター君と付き添っている高木さんが見える。
   近づこうとして剛君の足が止まった。
   ピーター君が泣いている。
   木の傍の草むらに座って、手で涙を拭いて泣いている。
   駆け寄ってタッサニーさんがピーター君の涙を拭いた。
   涙は拭いても拭いても止まらない。
   剛君は近づくことが出来ずその場に立ち尽くした。
   泣き続けるピーター君を無言のまま見つめた。
   泣きながらピーター君は吐いた。何度も吐いた。
   それは少年の胸から吐き出された、悲しみの血の涙だった。
   
    ピーターの心は幼い頃の辛い思い出に耐え切れなかったのだ。
   ナレーションで剛君は語った。
   
    孤児となり、エイズ感染を疑われ引き取り手がなかった幼い子ども。
   それを見かねて長老が育ててくれた。
   5歳のとき『希望の家』に引き取られこの村を出た。
   生まれたこの村に帰ってこられるようになったのは2年前のことである。
   けれども、11歳の少年はこの村に自分のいる場所がないことを知っていた。
   私は少年の孤独の深さを思った。
   
    剛君は少年に近づき黙って水を差し出した。
   この少年に気休めのなぐさめの言葉などなんになろう。
   声を押し殺して少年はいつまでも泣いた。
   両隣に座って、吐き出した汚物や涙を拭いてあげている高木さんとタッサニーさん。
   剛君に言葉はなかった。
 
    少年は高木さんと手をつなぎ無言のまま歩いた。

    建物の中で一人で休憩している剛君にスタッフが声をかけた。
   「ショックだった?」
   剛君は静かに答えた。
   「心に大きな傷があるんだね」
   何かを考えるようにその後の言葉がない。
   スタッフがまた聞いた。
   剛君は言葉少なく答えただけだった。
   
    ピーター君が剛君に話そうとした思い出話とはどんな話だったのだろう。   


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オリビエ [MAIL] [水平線の海と空]

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