うららか雑記帳
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浅田次郎『壬生義士伝』春秋文庫
──小雪舞う一月の夜更け、大阪・南部藩蔵屋敷に、満身創痍の侍がたどり着いた。 貧しさから南部藩を脱藩し、壬生浪と呼ばれた新選組に入隊した吉村貫一郎であった。 “人斬り貫一”と恐れられ、妻子への仕送りのため守銭奴と蔑まれても、餓えた者には握り飯を施す男。 元新選組隊士や教え子が語る非業の隊士の生涯。浅田文学の金字塔──
上下巻、読み終えました。 タイトルから分かるように幕末もの、しかも新選組。大好物です。 なんたって私は父の影響で司馬遼太郎『燃えよ剣』『新選組血風録』を中学時代から愛読していたような奴ですから、歴史は苦手でも幕末にだけは思い入れがあるのです。 和月先生の漫画『るろうに剣心』や吉田直先生の小説『FIGHTER』も、そもそもは幕末絡みという題材に惹かれて出会ったんですよ。 猫にマタタビ、浜月に幕末もの。浅田次郎先生の作品も大好きだし、文庫が発売されてすぐに買うだけは買ったんですよ、たしか。 よーし、じっくり読もう!と思ってついつい放置すること数年。偶然本棚から発掘したので、これを機にと読み始めました。 そしたら……そしたら……
ページをめくる手がとまらない! 滂沱と流れ落ちる涙もとまらない! 時間を忘れ、我をも忘れ、ひたすら作中に没頭!!
傑作です。まさに入魂の一作です。文句なしの五つ星! 中国の清末期を描いた『蒼穹の昴』もすごく良かったし、偏屈な小説家と極道たちの悲喜こもごも『プリズンホテル』も大好きだけど、それら以上の威力です。一撃必殺。 とてつもなく重い衝撃を食らったような感覚、に近いかもしれません。 少なくとも、まだ読み終わってもいないうちから「絶対にもう一度最初から丁寧に読み返そう」と思わされる作品なんて、そうそう出会えるものじゃありません。 内容ももちろんのこと文章の技巧面も素晴らしくて、単語ひとつ、台詞ひとつ取ってみても、絶妙としか言えませんでした。 一人称の極み、ここにあり──それくらいの堂々たる筆致です。 おいおい大袈裟な、と思われるでしょけれども、読めば分かります。 ぜひぜひ一度読んでみてください。きっと共感していただけると思います。 漢字や専門用語、方言が多いけれど、そこはやはり浅田プロの手腕。うまくバランスを取って読みやすくしてくれていますから。 苦手な方でも、斜め読みをしなければ充分に読み進められるでしょう。 というか、この方言がね、これまたこの作品の真髄でね! ああ、上手にお伝えできなくてもどかしい。 とにかく物凄い感動しました! どなたか『壬生義士伝』を読んだ方、語り合いましょうよ〜!!
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