目次 / 戻る / 進む
これは誰でも ある程度そうなのか、自分だけがそうなのか、 ちょっと判らないのだけれども、その人の声が中々認識出来ないと 言う事がある。
何を話したかは ある程度憶えているのだが、声が記憶に残らない。
例えばメールなどのやり取りであれば、文面を残す事が可能なので 必要であれば何度でも読み返す事が出来る。その安心感からか メールでのやり取りに、特別な緊張感を持つ事はない。
会話でのやり取りには、いわゆるログが残らない。 どんな事を話したかについて、なるだけ憶えていようとする事に 頭が行ってしまうのだろうか 話した事を憶えていても声が残らない。
私の車の営業マンは、ここだけの話だが実はとても苦手なタイプで がさがさと話す。 その名前を聞いただけで(嫌だけど)その顔を 思い出し、頭の中で がさがさした声が響いて来る。 一旦幾つかの情報が結び付いてしまうと、音声は姿と共に自動再生 される事もあるようだ。
名前を聞いただけで姿が浮かび、音声が自動再生されやすいのは 相手がイヤなタイプと言うのが一番である気がする。
学習教材の販売員さんは中々にしつこい。 断っても断っても電話が来る。 だが彼女らは一方的に電話を掛けて来ているだけなので、情報が 煩わしいと言うだけで、声はやはり、漠然としか残らない。 頭の中でキャンキャンと彼女らの声が売り文句と共に鳴り続けるのよりは ましだと思う。
そんな感じでそれほど困った事ではないのだが 同じ声を何度聞いても認識出来ない事が情けなく思う事もある。 何を言っているか、そればかりを聞こうとしてしまうからか。
長く話せば、話された情報量は多くなる。 声の方は思い出せず、情報も記憶し切れていない。 何も思い出せず、自分にとって大事な事であった場合は寂しくなる。
目を閉じれば聞こえて来るのは、正直嫌いな営業マンの 「車検の時はかなら〜ずボクに連絡下さいねえ」と言う、いかにも 調子の良い声ばかりだったりする。
しかも同時に、彼のむっちりした姿も浮かんで来るのだった。
|