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我が家の玄関に居た息子の同級生のK君、1cmほどの小さな蛾がぷんぷん 飛んでいるのを発見した。この子は運動神経と反射神経に、大人の目から 見ても並外れた物を持っている。親御さんは時にそれが悩みの種らしいが。
一瞬で硝子に押し付け、小虫をぺちゃんこにするK君。確かに相手は 飛んでいるので 大した技だ。だがその後がいけない。 手に付いた物をべろ〜んとひとなめした。あっと言う間もありゃしない。 「まじい」顔をしかめて一言。 「あのさ、毒持ってる虫とかも居るからさ。何でも口入れちゃ駄目だよ」 「何でもないよ」 あるんだって!毒蛾とかだったらどうすんのよ。
別な日、家の中に飛び回る、それより少し大きめの蛾を見付けた息子。 「どうする?逃がす?」 「逃がす」「自分で逃がす?」 「うん」 どちらにしても捕まえるのは私の役目だが、息子は暴れる蛾を手で包んで 開けた窓から放した。だがその後がいけない。 いつもの癖で鼻に指を突っ込んだ。 「べ〜っくしょんっ」 「あのさ、リンプンって言って羽根に粉が付いてるからさ。鼻に入れるな」 「・・・びっくりした」
母として、近所のおばさんとして、「だからね」と説明する。「気を付けないとね」 半分、いや5分の1も聞いちゃいないのだが。こう言う事する連中は、初めから。 こっちも正直な気持ちは「お前ら、馬っ鹿だなあ」である。
昔の子供と今の子供、取り囲む物が余りに変わり過ぎちゃって ちょっと 簡単に比べる事は出来ない。だが子供はいつでもオバカさんである。 無論それは、知恵や経験の不足から来る物だから 笑ってはいけないんだろう。 だけど、知恵や経験でバカをやらなくなったら 人間はやっぱり少し詰まらない。
こう言う姿を見ていると、自分の子、他人の子余り関係なく 先がそれなりに 楽しみな事だと思ってしまう。 おそらくそう思っていただろう親の思いを 私などはしっかり裏切って来て しまったのかも知れないが。
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