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2006年08月22日(火) そんな二人の結末はどうしようもないエクスタシー

うらぶれた村でおんなとおとこは手をにぎりあっていた。
おんなの発するにおいはまるで放射能のようで
おとこはまるで被爆されるかのように恐れてて。

駅を出て申し訳程度の商店街を通りぬけ、
何十分か歩き続けてたどりついたうらぶれた村のある馬小屋で、
藁にまみれながらおんなとおとこは服を脱いでいった。
情を挟まずにおとこを見下ろすおんなの眼差しは、
おとこの内部の男という性を見据えているかのよう。


おんなが 何か しゃべった。
唾液に濡れているおんなの口が 何か 声を発した。
音無しのおとこは凝視する濡れているおんなの口を。
おんなの口の奥では赤黒い舌がまたぬらりと見える。

やわらかく口は動きつづけている
「あ」 口は半月形となる
なめらかに口は動いていった
「ん」 口は薄く微笑む形となる

おとこの眼は おんなの口へ まっすぐに注いで
言葉を解体して言葉を発見して言葉を見つけて言葉を思考してそこにある言葉を極めようとした。

しかし途中で口から言葉が追えなくなった。
追えなくなってもおんなの口は止まらなかった。
おとこは止めてもらって再度どこから話してもらうか乞う術を知らなかった。

言葉を追うことを放棄したおとこの眼、艶かしく動くおんなの口を眺めて 眺めた。
おんなは飽きることなくしゃべり続けている。
時折、渇いた唇を潤すために舌をちろり、ちろりと出していた。

あの様子はまるで性器のようだ と 感じていた。
言葉を滑らかにするために濡らしている あの様子はまるで顔にある性器のようだ。

性器が言葉を発しているという様の不条理さ加減において おとこは屹立していた。 

おんなの口はおとこの眼に犯されていた。
おんなもまたおとこの浴びせかけるような激情の視線に 欲情していた。


そんな二人の結末はどうしようもないエクスタシー。
そんな二人の結末はどうしようもないエクスタシー。
そんな二人の結末はどうしようもないエクスタシー。


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