ことばとこたまてばこ
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2006年05月16日(火) 私の音は誰の音

ぱぁん・ぱあん!

ふと三太夫の耳は明瞭なふたつの破裂音を聞いた。
三太夫は驚愕の表情で耳を押さえ、辺りを見回す。
しかし周りは雑多な人混みで音の見当のつけようがなかった。
そもそも、三太夫に音はない。不慮の事故で音を無くした音無し子なのだ。
戸惑いながら三太夫は耳をほじくる。
待ち合わせていた友人がやってきた。


よう!待たせたなあ!

ふと洋香の耳は明瞭な声を聞いた。
ドキリとして柏手をしていた両手で耳を押さえる。辺りを見回す。
しかし周りは静かな神社の境内で、何の人影も見当たらなかった。
そもそも、洋香に音はない。生まれつき感音性難聴の音無し子なのだ。
戸惑いながら洋香は耳をほじくった。
陽が暮れた神社はよりいっそう静けさを増すようで怖い。
洋香は小走り気味に家へと帰った。




彼の音を彼女が聞いた。

彼女の音を彼が聞いた。


私の音は誰の音。


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