ことばとこたまてばこ
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ぱぁん・ぱあん!
ふと三太夫の耳は明瞭なふたつの破裂音を聞いた。 三太夫は驚愕の表情で耳を押さえ、辺りを見回す。 しかし周りは雑多な人混みで音の見当のつけようがなかった。 そもそも、三太夫に音はない。不慮の事故で音を無くした音無し子なのだ。 戸惑いながら三太夫は耳をほじくる。 待ち合わせていた友人がやってきた。
よう!待たせたなあ!
ふと洋香の耳は明瞭な声を聞いた。 ドキリとして柏手をしていた両手で耳を押さえる。辺りを見回す。 しかし周りは静かな神社の境内で、何の人影も見当たらなかった。 そもそも、洋香に音はない。生まれつき感音性難聴の音無し子なのだ。 戸惑いながら洋香は耳をほじくった。 陽が暮れた神社はよりいっそう静けさを増すようで怖い。 洋香は小走り気味に家へと帰った。
彼の音を彼女が聞いた。
彼女の音を彼が聞いた。
私の音は誰の音。
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